「幕末!天命、投げ売りのクマさん」「ニコニコさんが泣いた日」 公演情報 演劇企画ハッピー圏外「「幕末!天命、投げ売りのクマさん」「ニコニコさんが泣いた日」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    動乱
     貧乏長屋住まいの町飛脚、熊八(クマさん)は、千葉道場の師範代、重太郎ともツーカーの仲。而もこの道場には坂本 龍馬が、脱藩後剣の腕を磨きに来ていた。(追記2016.4.7)

    ネタバレBOX

    千葉さな子と龍馬の件は措くとして、熊八は馴染の蕎麦屋の看板娘、八重に惚れられているのだが、やきもきするほど鈍感である。八重には、呉服屋の若旦那が血道を挙げていて、首を縦に振らない彼女を攫ってゆく。
     そんな恋のいろは坂を下る間に、彼は天命を受ける。何でも河岸の船がケシの実ほどにしか見えないほどの大きな黒船が異国からやってきて江戸は愚か日本中が大騒ぎになる、とのお告げであった。この話を千葉や龍馬にした所、そんなことが在る訳は無い、と一笑に付されたのだが。
     後日、クマの言ったことは嘉永六年七月八日、浦賀にペリーが来航したなど、総て現実になり、黒船出没以降幕府のみならず、日本中が上を下への大騒ぎ。尊王だ攘夷だと動乱の時代を迎えた。(但し薩摩藩は流石に約半年前既に島津斉彬が江戸にありながら、弟久光に米艦が来ることを予報、非常警戒を命じている。)
     一方幕府・朝廷はといえば11月23日に家定が、征夷大将軍・内大臣に任ぜられるなどという旧態依然のことを相変わらずやっている。こんな勢力が未だ大手を振っていたのも事実である。無論、早世したが勝海舟を抜擢した阿部正弘のような優れた老中も居たのではある、後に下級貴族から成り上がる岩倉などの新勢力も虎視眈眈機会を狙っていた。幕府・朝廷の内部が四分五裂していた様も以上のことで察しがつこう。今作では扱われていないが、ほぼ同時期、ロシアのプチャーチンが八月二十二日に長崎に来航し国書を手交している点も指摘しておこう。
     今作では、壬生浪士組から後新選組を名乗る、時代錯誤の迷い人集団を軽く扱うと共に戯画化し、やんわり批評している点、またクマさんが、小市民的な価値観のまま、動乱の時代の最も大切な位置を占めて活躍する内容に、ハッピー圏外らしい価値基準のヒエラルキーが出ている。
     また、この年3月11日には江戸、小田原、三島などを強い地震が襲い多数の家屋が倒壊。多くの死者を出している。
     一方、龍馬を中心に、英傑勝海舟対したたかな西郷隆盛が大人の交渉術を見せる辺りは流石にキチンと作っている。例えば、対面した時の刀の置き方(互いに鞘をつけたまま腰から抜き、各々の右側に置くかと思いきやそれぞれが左側に置いた)で、互いに警戒心を解いていないことを表し、江戸城明け渡し交渉の結論を出す瞬間、勝は刀を自分の背後に置き換え、戦意の無いことを示すが、西郷は官軍として入城するので刀の位置はそのままにするなどキチンとした表現をしている。また、謎の多い龍馬暗殺について合理的な解釈をしている。これらの点にも感心した。


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    2016/04/06 11:57

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