おおきに龍馬 公演情報 劇団Spookies「おおきに龍馬」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    鄧 麗君
     舞台上で演じられるのは、龍馬の周囲の人々の物語だ。いわば引き算の演出で、龍馬は登場しない。その代り、龍馬が纏めていた人々の分裂の危機や、葛藤を通して龍馬自体が走馬灯に映る影絵のように浮かび上がる、結構自分好みの演出である。それに、役者たちの頑張りも、土佐弁ベースも、シナリオの主張も賛成である。観ておきたい舞台だ。

    ネタバレBOX

    今作で、北辰一刀流の千葉道場でも名代を務めたことになっている泣き虫だった龍馬は、娘の佐那とも婚約関係にあったといわれる。他に妻、龍、姉で女傑というに相応しい乙女、そして、龍馬の師筋に当たる勝 海舟、海援隊の長岡 謙吉、石田 英吉、千屋 寅之助、白峰 駿馬(史実は男性だが、今作では女性)、高松 太郎、新宮 馬之助、沢村 惣之丞、
    陸奥 陽之助、中島 作太郎ら、また三菱の創始者、岩崎 弥太郎、中濱 萬二郎というよりジョ萬二郎と言った方が分かり易いか。他に大切な役回りを演じる、夫を龍馬の夢の為に殺され、龍馬を殺そうと付け狙う妻、井上 咲、龍馬の従弟で海賊になった山本 琢磨、陰で海援隊の隊士たちを支える陸奥 初穂、写真に被写体の生き様、魂を映し込もうとする写真家、上野 むらとアシスタントの楢崎 君江、龍馬無き後、海援隊の危機に当たって参加を決意する井上 清次郎、そして、琢磨を助け、海援隊隊士たちを鍛える為に、敢えてダーティーな役目を引き受ける海賊たち。
     実際に日本人の5%以上の人間が、武器を操ることができた時代に、欧米列強の植民地にされない為には、武器のある戦いが必要であった側面はあるだろう。然し、今作で最も大切な点は、生きている人間一人一人が己の頭で考え、その考えをもとに行動し、その結果を己の責任として負うことと、武力・武器を用いず世の中を動かすことである。安部以下のぼんくら政治屋と頭の実に悪いことを自覚することもできぬ独りよがりのアホ官僚が考えもつかぬ方法で、我らは安保法制が成立した後も戦わねばならない。それは、表現する者としての戦いであり、そのような戦い方である。どうするか? 例えば、尖閣問題で問題化している中国籍の船に対して、大音響で鄧 麗君の歌を流す。彼女が日本人の作曲家や作詞家に作ってもらった歌も流す、その上で、そのことを中国語で説明する。当然、質疑応答にも備えて優秀な通訳も同席させておく。なぜ、鄧 麗君なのか? と問うのか? なぜ、彼女が、アジアのみならず、世界で最も支持された歌手だったか。その理由を知っているか? 文革で、中国の民衆は恋愛を語る言葉すら奪われていた。紅衛兵は有名だが、紅少兵が居たことは日本では殆ど知られていない。自分は何度か書いたことがあるが、目にしていない方も多かろうからもう一度書いておくと、紅少兵とは、ヒトラーユーゲントなどのように親をしもスパイだと時の政府に密告することも厭わないように教育で洗脳された子供たちである。実際、子供に密告されて多くの親がスパイ罪に該当する罪で処分された。日本では、少国民世代がこのような教育をされていた。まあ、歴史的なヒントはここまでにして本題に戻ろう。
     中国で文革後、恋を語る言葉さえ奪われていた中で、鄧 麗君の歌う歌の歌詞の中には、恋の微妙なニュアンスを伝える表現がふんだんに鏤められていた。人々は争って彼女の歌を求め、違法であった彼女の歌の歌詞を地下コピーして必死に聞いた。実際、見つかれば重罪に処せられたと聞く。死刑もあったかも知れない。何れにせよ、人々の彼女の歌に賭ける念はそれほど、深く強いものであった。それ故に、中国は彼女を恐れ暗殺したのだ。表現する者たる我々は軍事や力によらず、人々の念によって世界を変えるべきである。その為には、上に挙げたような方法を採るべきなのである。軍事と歌の力、即ち人の念の力のどちらが強いか、勝負である。

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    2015/09/19 02:36

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