笛を吹け吹け 双子のフロイライン 公演情報 演劇企画ハッピー圏外「笛を吹け吹け 双子のフロイライン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    Aチームを拝見
     ハーメルンの笛吹きの噺は、誰でも知っているだろう。鼠がたくさん発生して街の人々が困った時、道化の服装をした笛吹きが表れて鼠を皆、川へ追い込み溺れさせて街を救った。ところが、街の人々はなんだかんだと理屈をこねて彼に謝礼を支払わなかった。そこで怒った笛吹きは街中の子供130人を笛の音で呼び寄せ、何処へともなく連れ去ってしまった、という話である。

    ネタバレBOX

     この事件はドイツのハーメルンで1284年6月26日、ヨハネとパウロの日にこの街で起こったとされている。而も、キリスト教の科学を否定する精神によって知的には暗黒時代であったこの頃、一般の人々に理解し難いことは悪魔や魔法のせいにされるか、良いことであれば神の恩寵と解されるのが通例であったから、笛吹きは実は魔法使いであった、と言われてきた。だが、ハッピー圏外の解釈は、あくまで合理的である。では、どう解釈しているのか? 1260年に起きたゼデミューンデの戦いを起点とする、という歴史的解釈なのだ。今作では、ローマで有能な書記官として活躍していた男が、その合理的精神を枢機卿から嫌われて所払いになり、助手と共にハーメルンで領主をしている伯爵から家譜作成を頼まれ赴任してくるという話になっている。因みにこの伯爵こそ、女子供迄戦ったといわれるゼデミューンデの戦いの勝者であり、現領主という訳であるが、前領主は、領民からも慕われた名君であった為に、戦力に於いて劣る領主の為に民衆が加勢したとも取れる逸話が作品中で語られる。だが、前領主は、戦いに敗れ、領地を没収された挙句亡くなっていた。
     だが、現領主は、民衆に人気のあった前領主の子が何処かに落ち延びて生きていることに恐怖を抱いており、いつの日か忘れ形見の子が、挙兵して自分を襲い滅ぼすのではないかと恐れていたのである。
     書記は、助手と共に、先ず、一時情報を集めることから始めた。彼が興味を持ったのは、2年前。即ち、子供たちの失踪事件が起こった2年前、実際に何があったのかである。それを確かめる為、彼と助手は、人々に訊いて回った。数々の証言が集まった。書記たちは、証言を更に集めてゆく。嘘の証言をすることに利害関係の無い下級兵士などの人々を含めて。また、旧領主の奥方が、町外れに生きていることを探り当てて、家系図などの資料も入手すると共に貴重な証言も得た。更に矢張り町外れに棲んでいるちょっと変わった音楽家からも、なぜ、笛吹きが鼠を退治することができたのかに関する科学的根拠を入手することができた。更に、戦に敗れた20年ほど前、旧領主の妃が5歳だった息子を預けた旅芸人一座の座長からの証言も得る等、多方面から様々な情報を集めることによってハーメルンの笛吹き男伝説の背景にあった史実を浮き上がらせてゆく。このシナリオの手際が見事である。
     作品の本質には関わりの無いことながら、池袋演劇祭参加作品で同一テーマを二つの劇団がそれぞれ全く違った舞台に仕立て上げるという面白い企画のうちの1本である。もう一つの劇団はショウダウン。26回池袋演劇祭大賞を獲得した劇団である。できれば、どちらも観たいものである。それに、捻りもある。ハッピー圏外はWキャストでの上演。ショウダウンは、スピンオフとして、林 遊眠の独り芝居もある。
     ところで、今作の演出に関して。道化衣装は元々、二面性をも表す表象である。折角、笛吹きは、デモーニッシュな姿にも極めて真っ当で紳士的にも見られる内容なのだから、彼に対するその時その時の人々の評価をデモーニッシュな評価の時には寒色の青を強く、また人間的な評価では赤系統の暖色系を強く当てるなどの工夫を強めた方が効果的だとは思う。

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    2015/09/03 01:35

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  • コメントありがとうございます。民間伝承「ハーメルンの笛吹き男」をテーマにした今回の公演、お楽しみいただけましたでしょうか。今後もぜひ、ご愛顧いただきますようお願いいたします。

    2015/09/05 19:13

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