くろねこちゃんとベージュねこちゃん 公演情報 DULL-COLORED POP「くろねこちゃんとベージュねこちゃん」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    14時の回を観ました。
    王子スタジオは初来訪。

    受付&開場時間になってシャッターが開いたら、
    ガラスばり&入ってすぐ座席&アクティングスペース&役者さん待機中。
    一気に「劇場」感に包まれて、興奮しました。

    座席は、受付を起点にして L のように2方向に広がる感じ。

    会場が道に面していて、外の車の音などが多少聞こえてきましたが、
    役者さんのセリフを聞き取ることに支障はなく。
    むしろ、シチュエーションが「佐藤家のリビング」だったので
    その音が一般家庭っぷりを増していました。


    上演時間は1時間40分。

    自分でも知らないうちに泣いていました。
    客観視することで、自分の境遇を知る…みたいな感触。
    観てよかったと思います。



    パンフレット、「売り切れです」と言われたので諦めたのですが、
    後日郵送で予約できたのですね…
    知らなくてそのまま別のものだけ買って帰っちゃいました( ;∀;)

    ネタバレBOX


    開場時間中、役者さんは音楽に合わせて動きまわったり、
    物販の案内板を持ってリズムをとっていたり、
    ちょこちょこ遊んでいる様子もかわいらしかったです。

    そんな役者さんたちが、
    諸注意の唱和を経て衣装に着替え「家族」に変わる様は圧巻でした。



    お話は、ふつうの一家の話。
    7割は「家庭」のシーンでよくある会話、
    よくある風景で構成されているのではないでしょうか。
    それをリアル、かつ飽きないように見せる
    役者さんたちのこまやかな演技に惹かれました。

    そして、税理士だった父親が亡くなって、
    脚本家を目指して家を出た息子(&その妻)と、
    パソコンで仕事をしている娘が久々にリビングに揃い、
    そのタイミングで父の遺言書が見つかって…という大きな山もあり。


    母親の脳内に存在する2匹の「猫」が、
    若き日の母親の行動をなぞり、
    それを老いた母親が白昼夢として見ている…
    と、いうシチュエーションが何度かありました。

    動きや喋り方がとても可愛らしい2匹の猫は、
    母親が今まで押し殺してきた
    (…と自分は思っているけど、実はずっとだだ漏れだった)
    自由気まま、マイペース、自分勝手な感情の象徴だったのかなぁ。
    母親が黙り込むうしろで喚きたてる、猫2匹の姿が印象的です。

    子どもの気持ちも経験済みのことなのでわかるし、
    母親の気持ちもそろそろわかる年齢になった自分にとって
    観ていて胸が締めつけられるような場面もありました。

    母親は痴呆が入りかけているのでしょうか。
    「自分は幸せだ」「私は愛されている」「あなたたちを愛してる」と
    相手に向けてるようで自分に言い聞かせているようなところ、
    それゆえに自分の価値観を押し付けてくるところ、
    家庭内での自分の役割を守ろうと必死になるところ、
    「哀れだなぁ」と思いつつ、「でも幸せそうだなぁ」とも思いつつ。

    母親を男性の役者さんが演じている(しかもウィッグや化粧もしていない)、
    虚構性全開のキャスティングでしたが、
    観ているうちに違和感がすっかり消えてしまい、ゾクゾクしました。

    「家族だから」許容している部分、
    「家族だから」超えないでいる一線…などを浮き彫りにする
    家政夫・長男の嫁という人物のありかたも面白かったし、
    ドキドキさせられました。

    水面が波立つような音、
    猫たちが戯れる時の愛らしい音楽(と猫=母の暴虐っぷりのギャップ)、
    もわもわと変わっていく照明の色も白昼夢らしくていいなぁと思いました。



    終演後に発売される遺言書(1000円)で、
    さらに深く(黒く?)ドラマを感じることができました。
    公演を観るだけでもその内容はなんとなく予想はついてたけど、
    実際に文章として目にすると、もう。

    それ以上に、母親についての記載が…ってところが衝撃でした。
    それが彼女にとって一番つらいんだろうなぁ。
    読み終わって「こんなのって…」と、思わず口から出てしまいました。

    誰も悪くないし、みんな家族を愛してる。
    各々、ウソを愛情でくるんで抱えている食卓。
    その温かさとうすら寒さ、居心地の悪さと母親のめいっぱいの笑顔、
    終演後チラシの絵を見て、また胸がぎゅうっとなりました。

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    2015/08/31 22:54

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