『タガタリススムの、的、な。』 公演情報 舞台芸術集団 地下空港「『タガタリススムの、的、な。』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    はこ 
     オープニングの科白、間の取り方に難あり。間の抜けた物言いに、興味が一気に白けてしまった。 特に”的な”などの一連のこの劇団独自の大切なハズの科白に、役者のヴィジョンが感じられなかったのは、問題。

    ネタバレBOX

     ある朝、クルイドダイナミクス社の社員食堂には、手足の無い遺体が置かれていた。一人だけ集合時刻に遅刻してくる派遣労働者がいる。名をオウスマコトと言う。派遣会社の連絡ミスが原因だが、彼が到着するまでに、殺人犯は彼だとの疑いが掛けられる。何故なら、彼と被害者は、何度も喧嘩している姿を同僚から見られていたからであり、つい最近も「殺してやる」というマコトの発言を聞いた者があったからである。SNSによって情報は瞬く間に拡散され、偶々、別件で取材に入っていたメディアのスクープとしても報じられることになって、結果、彼は、真犯人として追われる羽目になった。彼は、職場内で付き合いのある彼女の「逃げましょう」の言に従い彼女の手を取って工場の食堂から逃げ出す。然し、ニュースの流れる中でも、肝心な所になると、意識障害でもおきたように雑音や乱れ、頭痛などが起こって情報は伝わらない。ニュースの流れる度に、このようなことが起こる。二人は何とか逃避行を続け、途中でヒッチハイカーを装って夫婦者と彼らの車を支配下に置くことに成功、夫妻と共に隣国へ忍び込むことに成功するが、そこで明かされるクルイドダイナミクスの秘密は、其処で作られているのが、何かであり、誰が何の目的でそんな物を作り、人々に供与しているのかについてであった。最後の最後に、マコトの真の姿と彼の為してきたことが明らかにされる。
     因みにここで言及されていることは、フィクションであるが、似たことは、現実にアメリカのペンタゴンとウォールマートが組んで本当に実現しようとしていたプロジェクトに現れている。そのプロジェクトとは、人体にマイクロチップを埋め込み、其処から発信されるデータに基づいて埋め込まれた人間の位置、移動等のメタデータを衛星を用いて得ることであった。此処まで、小型化はされなかったものの、性犯罪を犯したことのある人間の体に鍵付き発信機を取り付けて監視していたことがアメリカで問題になったことはある。無論、この時にもメタデータが収集されていた。
     今作で描かれている世界で人体に埋め込まれているのは、LC即ちliquid computerである。目的は、埋め込まれた人々の操作である。無論、情報操作、感情操作等を含む、為政者に逆らわせない為の操作総てである。これは、他人事ではない。日々、この植民地でアメリカとその手先によってTV、出版物などのメディアを用いて行われていることである。その点を喚起することこそ、今作の意味だと解釈した。
     但し、演劇的には、今回、スターシステムに乗っかって初演の時のような緊迫感も無く、役者も主人公の演技レベルが低い。良かったのは、彼女役の方である。マイクを装着しているにも拘わらず、高円寺1のキャパを充分に計算しているとは言い難い演出で、科白が聞き取り難いシーンが多すぎる。演出家はイギリスに行っていたようだが、シェイクスピア俳優の演技力と日本の役者の演技力の差をキチンと計算しているとは思えない。猛省すべきだろう。折角のシナリオが泣く。

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    2015/06/06 18:16

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