『Fermat's Last Theorem』(フェルマーの最終定理) 公演情報 ユニークポイント「『Fermat's Last Theorem』(フェルマーの最終定理)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    理解からないということが分かれば楽しめる
     アンドリュー・ワイルズが証明をして見せるかも知れないと思われたフェルマーの最終予想を描いている時点で、世界中から数論の世界的権威がケンブリッジにたくさん集まっていたことぐらい“フェルマーの最終定理”という知的響きに引き寄せられて見に来る観客には周知の事実だろう

    ネタバレBOX


    。だが、所狭しと押し寄せていた人々の中で、果たしてどれだけの人が、ワイルズの説明をリアルタイムで理解し得たかは、甚だ心もとない。子供でも分かるピュタゴラスの定理とその証明を原点に、谷山・志村予想は、無論のこと、それ以前に、無理数や、虚数、虚数平面などの基礎的なことが分からなければ理解できないのは当然である。だが、それで良いのだ。演出家は、当然、その辺りの事情を織り込んでいる。
    大切なことは、数学が、証明という作業を経ることによって普遍性を獲得する学問であるということに気付くことなのである。総てが、この普遍性を獲得した定理の上に組み立てられた厳密な論理によって判断される。そこには、性差、社会的地位、民族差、貧富、戦の勝ち負け等、あらゆる差別を排除する真理探究への真摯な態度があるだけである。
    今作の主眼は、其処にある。序盤、中盤と歴史的に数学を学ぶ女性に対する差別が描かれているが、それは、あらゆる差別の象徴として描かれているのであり、それに抗するものとして数学が対置されているのである。本来、今作の主役たるべきワイルズは、音声でしか登場せず、同僚のプリンストン大学教授・伊原さえ、ワイルズが“フェルマーの最終定理”に挑んでいることを知らなかったという科白に、真理が、俗世に対して置く距離が、描かれていると言って良かろう。それ故にこそ、終盤のシーンがあるのだ。(上演中故、何があるかは、観てにゃ! 役者たちの頑張りも見ものにゃ)

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    2015/02/07 11:44

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