悲しみよ、消えないでくれ 公演情報 モダンスイマーズ「悲しみよ、消えないでくれ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    樹脂の光沢のごとき
    クオリティの高い芝居の出来であった。芸劇イーストの空間と機構を使い得ている雰囲気、緊張感と人物たちのリアルな生きる時間が終幕まで持続し、話じたいにもそこはかと揺さぶられるものがある。ここ幾本か劇団公演を観てきた目からは、最上の仕上がりであった。
    もっとも「良い」とか「高い」といった言葉はその芝居の娯楽性(エンタテインメント性)の達成度を言っていて、つい口から出てしまうが、今回のは私の勝手なモダンスイマーズへの思いからの感慨。作品と同程度かそれ以上に劇団の来歴なり構成員の特性や事情にいつしか思いを及ばせる(思い入れのある)数少ない劇団の一つだから、今回の舞台製作の成果には、対外試合で苦節のすえ勝利したスポーツ選手への拍手に近い心情と感動があった。
    芝居の質感としては、蓬萊戯曲の空気(台詞の行間に語らせる)を漂わせながらも、意味深な伏線の謎解きが二転三転するサスペンス構造で物語として圧縮された感がある(過去作品に比して)。人物の役割(ロール)の演じ分け、互いの棲み分けが素晴らしく、人物の一貫性の点で空白をほとんど感じない。それによってサスペンスが成立するのみならず、人物らがアトモスフィアの中に群像として立ち上がり、愛おしい。この群像の中心にあるのがでんでん演じる山小屋の主でキーマン。主人公の青年(古山)はストーリー上最も大きな問題を提供する存在となっているが、他にも主の娘、これに縁のある山岳仲間、物資運搬に出入りする夫婦らが、濃淡ある親密圏を形成し、この濃淡に応じた関係性が群像を作っていく。でんでんは一瞬のほころびなく手抜きもなく立ち、圧倒的に強靭だった。拮抗するようにして他の役者も、その人自身と見まごうリアルさで、切実に存在する。何よりその人物像の「現代性」にえらく共感するものあり、細を穿った造形は痛快というより恐ろしい。自分を見るようだった。

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    2015/01/29 01:34

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