体夢-TIME 公演情報 劇団桟敷童子「体夢-TIME」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    ヒトというカオスに夢はまだあるのか
    多くの男たちにレイプされ水底に沈められた母から生まれた待夢。彼は復讐を誓うが、レイプ犯は全員、既に自殺してしまっていた。

    ネタバレBOX

     人口を激減させたパンデミックに罹るよりは、死を選ぶ者達の圧倒的多数の中で、彼らの自殺が特段意識されることもなかった。だが、ムッソリーニ政権下での黒シャツ隊、東氏が、今作を書くに当たって触発されたというギュンター・グラスの「ブリキの太鼓」の背景にあったナチズムの影を、矢張り見逃すわけには行くまい。無論、現在、この植民地で行われている宗主国一体化(集団的自衛権行使)なども射程に入っているのは明確であろう。ナチズム勃興当時、ドイツのインテリ層はヒトラーを愚か者と見做し、あんな人間に政権奪取や維持は不可能だと笑っていた。丁度、今、我々が、ホントに無脳(能と書かないのは、間違いではないぞ!)な安倍を無脳だと言っているのと同じことだ。車の両輪のように、情報隠蔽をその本質とする特定秘密保護法も施行されている。この悪法が、戦前の治安維持法より性質が悪いこともまた明白。この先、政権が狙ってくるのは、共謀罪であろう。これらは、情報公開法と公文書管理法に対するあからさまなアンチテーゼであることは言うまでも無い。
     今作で問題となるパンデミックをこと政治に掛けて読み込むならば、こんな具合にも読めるのだ。作中、このパンデミックは、ウィルスによるのでもないことが強調される。接触、空気感染等の心配もない。而も、罹ったら最後、あらゆる欲望を喪失する。そして、掛かり易い状態とは、パニックに陥ったような時である。冷静を保つことが唯一罹り難い方法なのだ。だが、病理学的な対処は一切できていないし、既に人口の大部分が失われている。
    無論、今作は、そんなに限定的に読み込むだけでは、埒があかないし、待夢が、9歳、24歳、そして初老の形で現れるのも、作品内だけで読み込めないことを前提としている。何故なら、同一人物が、3世代に亘って同時に存在している物理的次元に対する表現が入っていないからである。合理的な考え方として出てくるものは、背景にある創造者の問題である。そして、創造者は、タイムを自由に行き来しているのだ。恰も夢の中の出来事のように、説明し難い、それでいて、酷く懐かしく魅惑的で非合理な当にカオティックな状態を、その子供時代の混沌として表した作品と言えよう。
    没入できるかできないかで評価が分かれるとは思うが、いくらでも深読み可能な作品であり、ヒトという生き物が、今後、食物連鎖の最上位として、存在して良いのか否か迄も問う内容であるとも読み込める作品なのである。

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    2014/12/23 11:27

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