マッチ売りの少女 公演情報 CHAiroiPLIN「マッチ売りの少女」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    表層と深層
     スズキ 拓朗氏のソロ、火の用心は、巨大マッチとのバランスダンス。マッチ売りたちのダンスは組みダンス。(こういう言い方が正しいかどうか分からないが)いつも通り、バランス感覚の良いダンスだが、元々を辿ればアンデルセンの悲劇童話だ。が、今作のテキストは別役 実バージョンである。

    ネタバレBOX

    手元に別役テキストが無いので確認できていないのだが、今作では、マッチ売りの少女が模範的な市民の住まいを市役所で確認した後訪ねてゆくシーンがある。
    生じ入れられた家では、丁度、お茶を飲んでおり、少女もお呼ばれに預かるのだが、出されたカップは1つ。然し背後には同じ身なりのマッチ売りの少女がまだ7,8人は居る。その約半数は、男の役者である。而も招かれた少女を含む全員がオープニング直後のダンスシーンでは、マッチを擦った後、股間に灯りが点るダンスを披露している。答えは自ずと明らかであろう。因みに少女の年齢は7歳である。
     少し、世間を知ると言う者なら、マッチする束の間に、彼女達は生者の果てのない闇を見せていたのだ、とでも言わねばならないだろう。それは、行儀よく、模範的小市民として暮らしている夫婦の居間の暖かさの陰には、陰惨で鬱々とした年端も行かない男娼、娼婦の現実が横たわっている現実を示しているのだ。
     そして、招じ入れられた1人の少女の背景にたくさんの同じ格好をした子供達が居るのは、無論、彼女1人が例外ではないどころか、子供達の行きつく先が此処にしか無いことを暗示している。その意味で、マッチを売る総ての子供が、「善良」な市民の子なのである。おまけに、7歳の子供から、こんなことを思いつくわけでもあるまい。
     少女の訪ねた一角には、暖かい火の灯った家は2軒あった。2軒の間に小さな隙間があった。朝、少女の命は消えていた。彼女は手に殆ど燃え尽きたマッチの束を抱えていた。“彼女は寒かったのです”とナレーションは告げるが、彼女の寒さは単に冬枯れの寒さのみではあるまい。親切や善良を売りにしている小市民の陰の部分、普段決して他人に見せることのない、本能に支配された部分をひた隠そうとして様々に偽装する。その浅ましさにこそ凍りついたのではなかったか?

    0

    2014/11/08 11:43

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大