あの部屋が燃えろ 公演情報 MCR「あの部屋が燃えろ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    案外過酷な青春の日々
    冒頭の無茶苦茶なやり取りやテンポよく交わされる台詞に笑っているうち
    青春のほろ苦い日々というには、あまりにもリアルな痛みにがつんとやられる。
    そのリアルを再現するだけでなく少しシュールな香りを漂わせながら
    人の力ではどうしようもない運命をクールに描くところがMCRのすごいところ。
    役者陣がよくそろっていて隙が無い。
    櫻井氏の奥行きのある台詞がくやしいほど泣かせる。
    笑いと理屈とどうしようもない哀しみ、このバランスが素晴らしい。




    ネタバレBOX

    舞台はしょぼいアパート…のはずがひ、広い…。
    あたしんちより広いんじゃないかという、“あずましい”畳のワンルームが広がっている。
    客席がコの字型に囲むこの部屋の主は澤(澤唯)だが、隣の友人小野(小野ゆたか)や
    共通の友達堀(堀靖明)はもちろんのこと、彼女(?)やら下っ端やくざやら
    管理人の娘やら、果てはよくわからない人々まで
    いろんな人が出入りする、勝手に冷蔵庫をあける、人のベッドで寝る、
    壁にドリルで穴をあける、罵詈雑言を交わす。
    そんなとき、小野の彼女あすか(後藤飛鳥)ががんを宣告されているという
    超シリアスな現実が明らかになる。
    彼女の葬儀の日、澤の部屋にはあすかが現れてにこやかに小野とのことを報告する。
    組から追われていたやくざが床下から澤の部屋に入ると、
    ようやく結婚を決めた澤は部屋を引き払った後だった。
    「誰かいないの?!」と叫ぶやくざに、隣室からドリルで穴をあけて小野が応える…。

    澤は5分先が視えるのだが、周囲が期待するほどのドラマチックな展開はない。
    ただ、時折強い既視感にとらわれて思わず立ち止まる、という感じ。
    いつも運が悪くてシナリオが作品化に至らない小野の焦燥感も
    その彼女のあすか(後藤飛鳥)ががんになって死んでしまうことも
    なすすべもなく見守ることしかできない。
    澤を演じる澤唯さんは青白い顔で、手に負えない運命というやつを冷やかに視ている。
    5分先が視えたくらいで誰かを救うことなどできないのだという
    無力感に苛まれる澤の冷めた視線を上手く伝えている。

    2階に住む漫画家トリオの一人が櫻井さんで、例によって他人の心情を鋭く分析、
    容赦なくかき回して「嘘つくんじゃねーよ」的な台詞が当たってるだけにイタ可笑しい。
    今回もそれを堀靖明さんが上手く受けていて、憎めないキャラがこれまた可笑しい。
    堀さんの緊張感の途切れない演技がいつもながら素晴らしく、櫻井さんの台詞が活きる。

    無茶苦茶でしょうもない男たちが暴れる中、がつんと泣かせるところが2度あった。
    組から追われることになったやくざの本井(本井博之)が澤に別れの挨拶をするところ。
    「俺をバカにしないで普通に付き合ってくれてありがとう!」という意味のことを言って
    澤に頭を下げる場面。
    掛け算の九九を一生懸命おぼえようとする冒頭のシーンと相まって、
    根は善良だが落ちこぼれた人の、切ない一面を短いシーンで見せる。

    もう1回は、がんで入院する前にあすかがダメ彼氏小野に「どこに行っても応援してる」
    と伝えるシーン。
    ベタな場面なのに、彼女が「どこに行っても」を繰り返すたび泣けた。

    管理人の娘を演じた伊達香苗さん、いいキャラだったなー。
    “出会って4秒シリーズ”には笑った。
    なりきりぶりが素晴らしかった。

    男の“破天荒”レベルが、スケール小さい割に乱暴でちょっと違和感を覚えた。
    あすかがあそこまで純粋に小野を応援する気持ちが理解し難くなってしまう。
    とはいえ、MCRらしいシリアスとナンセンス、無茶苦茶としんみりのバランスは最高だった。










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    2014/11/02 05:33

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