満足度★★★★★
おなじみ“屁理屈問答”はやや抑えめ/約100分
一つでもグッとくるシーンがあれば5つ星をつけがちなのは私の習い。
そういうシーンが成り立つのは、それまでの話の進め方が巧い証であり、それもひっくるめて高評価を下すのはそう見当違いなことでもあるまい。
しかしながら、5つ星をつけるにあたってこのように長々と弁明めいたことをぬかすのは、本作があまりウェルメイドとは言い難いから。
もっと美談としてきれいにまとめることもできただろうに、本作には美談とはさせまじとするかのように多くの波乱が仕込んである上、それらの波乱が上手く回収されていないのだ。
そこには美談の枠に収まらなかった作者のまた別の主張が窺われ、困ったことに、私はその主張にも感じ入ってしまった。
ここまで書いて分かったことだが、どうやら私は、この波乱も込みでこの作品を高く評価しているらしい。
ここまでの書きっぷりからひょっとしたらお分かりいただけたかもしれないが、本作はいつものMCRほどエンタメ色は強くない。
また、恒例の屁理屈バトルもいつもほどハジけていない。
いや、というより、屁理屈バトルで過度に盛り上がることを許さないシリアス味を本作は宿しているのだ。
いつもより会話がドライブ感を欠き、ふっと静かな瞬間が訪れることが多いのも、おそらくは今作がいつもよりシリアス寄りに出来ていることと無関係ではないだろう。
とはいえ、娯楽性をたっぷりと盛り込みながらも、「あ~、面白かった」では終わらないのがMCRの醍醐味でもある。
それを承知で毎作観ている私としては、後者の色が濃い本作も充分楽しめた。