ゲキ★BAR 公演情報 世の中と演劇するオフィスプロジェクトM「ゲキ★BAR」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    短編だから簡単というわけではないよ、逆。
    「Kaigi」「お見舞い」「立ち入り禁止区域の恋愛」の3本を拝見。1番目から25分、55分、20分の作品である。上手観客席寄りにバーカウンターが設けられていて、座ると、女性がオーダーを取りに来てくれる。ドリンク、つまみ等は料金が別途になるので注意。

    ネタバレBOX


    「お見舞い」
     昆明は雲南省の省都であり、数多くのマイノリティーが住む雲南省の全マイノリティーの半分以上が、この地に住む。人口400万人。独立意識は無論高いのは、中国の各時代に於いて東南アジアへの玄関口であり、元によって中国領とされる迄は、四囲を山に囲まれたこの地に住む各民族毎に自治を保っていたようである。現在26民族が住むという。年間平均気温14.5度、1月でも8.1度、7月が19.9度と中国国内で最も過ごしやすい気候の土地で、海抜1891m。古くから栄えた土地なので、中国有数の古都市としての魅力も具える。
     ここを故郷とする仁は、日本人と結婚したので、現在の本拠地は日本だ。然し、近年、騒がれるヘイトスピーチによって、唯でさえデペイズマンのある身にとって、居心地は決して良くない。神経を病むようなことさえ懸念される程だ。アイデンティティー崩壊の危機に立たされ続けるのである。それは、故郷へ戻って来ても変わらない。既に国籍は日本であり、夫、娘も日本人だ。E.サイード流に言えばOut of placeという状態である。
    今作では、取り敢えず、親友の光蓮の所へ寄ってから、二人の恩師が入院している病院へ見舞いに来たという設定だ。物語は二人の雑談で進んで行く。アクセントとして、地方から、昆明に働きに来ている少女が出て来て、現代中国の状態を表しており、この辺も頗る上手いシナリオである。雑談の中で、革命以降の中国現代史も語られる。例えば、仁の父の話から分かるように、文革・紅衛兵(紅小兵)時代の中国の様子等も推して観るべきだろう。でなければ、恩師の怒りっぽさや、古代中国詩を教えられている側には気付かれない位に気をつけつつ、本質を伝えた意味が、こちらに伝わって来ないし、そもそも、何故、怒りっぽい、と見える先生を中年になった嘗ての女性徒が訪ねるのか、また、佐藤春夫が訳した、中国の古詩が、ダブルミーニングで言及されるのか意味が分からなくなる。 
    今作が、今日、拝見した三作の中で本当は最も格調の高い作品である。上品で華麗、而も、その作品の底には、中国現代史の闇がキチンと畳みこまれている。にも拘らず、現在の自分にとって、ディレッタントを自称する自分にとってさえ、今作を2位につけざるを得ないのは、2011年3月12日以降の大問題があるからである。亡くなった方々、親族・捲族を失くされた方々には申し訳ないが、今迄も、これからも、地震と津波だけなら、どれだけの被害を蒙ろうとも、哀しみを糧として復興を目指すことができた。然し、核被害は根本が異なる。未来など、何処にもないのだ。従って、本来、国家の為すべきことはこの残酷な事実をありのまま、被災者に告げ、生き残った被災者に対する根本的な代替策を練ることであった。つまり離散宣言を被災者に通知徹底することであったのだ。にも拘わらず、為政者達は、根本問題をネグレクトし、忘れさせようとした。強大な力の前で、この国の武器を持たぬ民衆は、キチンと自分達の権利を主張する手段も持たないまま、歪に自らを変質・変形させていった。その結果が現在、既に至る所に現れている。この全く明日の無い状況が、ディレッタントをして、芸術的に最も優れた作品を推すことを許さない。
    「立ち入り禁止区域の恋愛」
     本来の評価は2位である今作が、今、自分が推す今日拝見した作品1位だ。無論、扱っている問題が、プルトニウムなど、現在、日本政府が発表している核種の中で、半減期の長いものを扱ったからである。それも、小松左京原作の日本沈没と掛けた形で。こうすれば、原子力については分からない、と逃げている日和見な人々にも届く可能性が広がる。放射性核種で汚染された立ち入り禁止区域にも、研究者や作業員は居る。研究者は、核の汚染による生物への影響を研究する為、残留放射能の多い立ち入り禁止区域に残った若い女性だ。作業員も若い男性である。若い男女が、シンドイ状況に四六時中置かれていれば、恋に逃れるしかないのは必然である。結果、妊娠した。当然、両親共に、汚染されている。子供は欲しい。然し、生まれてくる子供に障害がないという保証もなければ、様々な劣勢がないという保証もない。、まともな研究者であれば、ICRPやWHO、エートス、国家、IAEAや核大国が出鱈目を流し続け、研究者としての態度を完全に放棄していること位、重々承知している。産むのか、産まないのか? そもそも、産めるのか? 大きなリスクを背負って!
    「Kaigi」
     カフカの作品を劣化させたような作品。論理そのものに必然性がなく、従って弱い。詭弁と上げ足とりのレトリックで構成された皮相な作品だから、その皮相を強調すれば、面白い作品になったかも知れない。

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    2014/09/23 13:08

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