【全ステージ終了致しました。ご来場ありがとうございました】イける☆この頃 公演情報 ウンゲツィーファ「【全ステージ終了致しました。ご来場ありがとうございました】イける☆この頃」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    役者の個性を活かす演出の妙!
    演出と演技が一体となっている。
    それぞれの役者の持っているおそらく「素」の魅力を、
    そのまま舞台に乗せているという感じ。

    当て書きであり、当て演出なのではないか。
    その為、役者が全員とても魅力的。
    素晴らしかった。

    ネタバレBOX

    誰しもが少なからず抱えている孤独や不安。
    それを安易な形で解消するため、他者に依存する。
    恋愛はその典型であり、性行為はその不安を解消する手っ取り早いはけ口となる。

    依存は恋愛に限らない、家族、友人、、、買い物、ネット、携帯、テレビ、、、など、誰もが何らかの形で不安のガス抜きをし、ダマしダマし生きている。

    まさに主人公もそうなのだが、どこかでそれが許せなくもある。

    恋人は一度主人公の元を去った。
    その間(1週間)に、彼女は共通の友人と付き合っていた。
    そして、また戻ってきて「会ったら、やっぱりあなたが好き」と言う。

    彼女にとっては、おそらく誰でもいいのだ、自分の空洞を埋めてくれる相手なら。
    だが、それは主人公も同じこと。

    そのことに自身が気付いた主人公は絶望に暮れる。
    通っていた大学からも除籍処分も受け、未来も見えない。
    そして、死のうと思う。
    死のうとするが、どうしても死ねない。

    そこにバンドをやってるバイト先の先輩が戻ってくる。
    そこで「死にたい。でも生きて行こう。」というような能天気な歌を歌いだす。

    その先輩の歌のバカバカしさに、逆に主人公は救われる。
    自分が抱えていた不安はちっぽけなものだったのだと。

    そこで幕。


    興味深いのは、登場人物たちが、皆、それぞれに不安を抱ていそうに見えるのだが、その悩み自体やその背景はあまり語られないということ。
    多くの人は主人公のように深刻に物事を捉えていないということを批評しているのか。
    あるいは、深い孤独や苦悩を抱えていても、それを他人には安易に見せないということを表象しているのか。
    いずれにしても、どうとでも解釈できて良いとも言えるが、
    単に物語を薄くしているようにも思える。

    だが、全体として絶望に対比する形で笑い・ユーモアが現れるのが良かった。それが緊張と緩和の落差を生み、笑いを増大させていた。

    特筆すべきは、
    意図的な演出か、役者のミスかわからないのだが、
    ラストでバイト先の先輩がギター片手に新曲を歌う場面。
    彼はうまくギターを弾けずに失敗をする。
    そしてもう一度やり直す。

    演出の可能性もあるが、観ている側の印象としてはミスをしたように見える。
    そこで大きな笑いが生じる。
    お芝居という嘘が壊れたからだ。しかも緊張を強いる場面で。

    また、同じ場面で、舞台上の他の役者がそのバイト先の先輩の演技に素で笑ってしまったのだ、違う場所にいるという設定なのに。
    この普通の芝居で言ったら痛恨のミスも、この芝居では極めて大きな笑いに替わる。

    それを可能にしているのは、このドキュメンタリー的とも言うべき役者の「素」が活かされた演技があったからこそ。
    それが役者を救ったというよりも、そのアクシデントこそが面白かった。
    (これに関して役者を責めるつもりは微塵もない。むしろ、「ナイスハプニング」と言いたい。)

    この芝居は、アクシデントが起れば起こる程、面白くなる舞台なのではないか。もっと意図的にアクシデントが起る仕掛けをばら撒いておくのも良いかもしれない。

    アクシデントが面白いのではない。虚構が崩れることが面白いのだ。
    そして虚構が崩れても、劇空間が崩れない「役者/素」が存在していたから凄いのだ。

    とても面白い役者の在り方だと思う。

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    2014/09/16 00:37

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