蜘蛛女のキス 公演情報 パンダの爪「蜘蛛女のキス」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    原作を読みたい!
     1990年に57歳で亡くなったマヌエル・プイグの小説・戯曲で描かれた傑作を“パンダの爪”は、メジャーでは描かれない部分にスポットライトを当てる形で、朗読劇に近い舞台にして見せた。4時間近い上演であったが、原作の持つ凄まじいメッセージ性を良く取捨選択して、背景にあるイギリス植民地としての癒しがたい傷、アメリカの中南米支配とその軍門に屈し、アメリカの収奪した蜜に群がる、当時のアルゼンチン政府内部の右派勢力の動きが寓意され、その民主勢力、マイノリティー弾圧が背景にあることは、疑いようがあるまい。

    ネタバレBOX

     自分は中南米の歴史は詳しくないので、アメリカが、世界第8位の国土面積を誇るアルゼンチンに露骨に関与したというつもりは無いし、フォークランド紛争を見ても分かるようにアルゼンチンの旧宗主国はイギリスであるから、問題は錯綜していよう。
     少し、調べて分かったことを付け足しておくと、アメリカ陸軍米州学校、イスラエル、スペインなどで訓練を受けた死の部隊が、中南米各国の民主勢力へのテロ実行部隊として動いたようである。言う迄もないが、以上で挙げた3国では、テロ民兵を作るべく軍事訓練が行われていたのである。実際、今作に関係のある所では、死の部隊は、民主化勢力を拉致しては酷い拷問に掛け、挙句の果て、航空機に載せて高い高度から突き落したりしている。この事実は、実際、それらの事実を目撃した方から、自分自身伺った話である。
    因みにレバノンで、サブラ・シャティーラ虐殺事件を実行したマロン派民兵も、虐殺事件を起こす前にイスラエルに連れて行かれ、テロを一般市民に行う為の訓練を受けている。今作の原作が発表されたのは1979年であるから、背景にあった歴史的事件は、ぺロ二スタ左派・右派の抗争である可能性が高いのかも知れない。
     だが、プイグは、そんなに単純化してこの物語を描いてはいないのであろう。所長から変態と言われるモリーナと革命闘士バレンティンの間でのホモセクシャルな行為は、スパイ、拷問、あらゆる罠と盗聴、監視、及び自由の剥奪された状況下で尚、人が人として何を縁に生き得るかを問う、重い行為である。其処には、知性・理性と人間性の耐え得る最終的な次元が横たわっているのだ。彼らは、たった2人だけで、強大な権力に、精神の次元で勝利するのである。

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    2014/09/02 01:34

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