安部公房の冒険 公演情報 アロッタファジャイナ「安部公房の冒険」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    何度も観たい舞台
     現在のこの国の演劇状況と、安部 公房が生き、演劇にのめり込んだ時期から亡くなるまでの10年余の時を、描いた作品だ。当時世界で活躍するピンター、ベケット、イヨネスコらと共に、米ソでも人気の高かった安部が、新劇と言えば、千田 是也と言われた当時、新たな可能性として出現した寺山 修司、唐 十郎ら若者に支持された日本のアングラ演劇状況に於ける単独者として新地平を切り開いて行こうとする姿勢を描くことで、作品そのものを用いた現代演劇批評として観ることができる。

    ネタバレBOX

     同時に、妻・愛人との繊細且つ濃密で緊張した愛の関係を通して、男と女、肉体と精神という永遠のテーマと同時に、三角関係自体の持つ心理的な綾と肉体の関係を精神対肉体という二元論に於いてではなく、生きた身体として捉え返し、身体同士のダイナミックな蠢きやその関わりから生じる新たな心身両局面の表現として、更には映画やTV他新たな記憶装置や記録装置の出現を人間化しようとしたようにも思われる、その進取の精神は、噂にきくピーター・ブルックの仕事にも近いのかも知れない。
     脚本は、いつも通り松枝 佳紀なのだが、いつもなら、演出も彼が務める所、今回は、荒戸 源次郎が担った。結果、説明過剰や情報量の過重が削がれ、その分、間の時空が増えた。つまり、作り手と見る側の間の想像的時空間が増えた訳である。このことが、作品に、よりヴィヴィッドでありながら、共感しやすい状況を作り出した。
     更に、アロッタファジャイナとしての連続性や転換点も観ておくべきだろう。今回は、佐野 史郎が、安部公房役なのだが、これは前作「かもめ」で彼がトレープレフを演じたことと二重写しになるだろう。恋人役の縄田 智子は、二―ナを演じていたし、妻役の辻 しのぶは、アルカージナを内田 明は、前回Wキャストだった関係で矢張り、トレープレフを演じている。男性俳優が2人ともトレープレフ役だったことにも注意したい。

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    2014/08/24 10:49

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