わっしょい!!鋼鈴の乱 公演情報 張ち切れパンダ「わっしょい!!鋼鈴の乱」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    まりっぺ
     マリは小学校3年の女の子。お父さんが居ないせいか、お母さんが入院していて叔母さんの世話になっているからか、独立心が強く、世知に長け、勉強は嫌いだが、中々はしっこい。今日も、学校帰りにクラスの苛めっ子3人に襲われたのだが、返り討ちにしてやった。(2014.7.9追記)

    ネタバレBOX

     苛めの理由は、参観日で皆が、其々、宿題で書いて来た作文を読んだのに、マリだけが読まなかった。という理由だ。彼女が宿題をやってこなかった。そう苛めっ子達は思っていた。実際は、宿題はキチンとやってきていた。ただ、入院しているお母さんに直接読んでやりたかったので、クラスの皆の前では読まなかったのだ。叔母さんは忙しいので、参観日に来て貰うのは遠慮していたのだが。結局、学校から、呼び出しを喰らった叔母さんは、学校へ来た。そして、返り討ちに遭った苛めっ子達に飴をやって宥めると、ご飯代や小遣いをくれようとするのだが、自分で生きて行く、と強がってマリは受け取らない。そのまま、叔母と別れて、母の入院している大岡山病院へ行こうとする。然し、問題の病因が何処にあるのかも、どれくらいの距離があるのかも分からない。そのうち、夜になってしまった。交通費も食費もなく、とぼとぼ歩いている内に公園に辿りついた。ここで野宿しているホームレスのオジサンに出会った。開口一番、病院の場所を訊いた。オジサンは、病院の名を聞くと、「遠いぞ」と言う。オジサンを良い人だと見抜いたマリ、オジサンの傍に坐ると、臭い。遠慮なく「オジサン臭い」といいつつも、少し座る場所を離しただけでチョコんとオジサンの横に座っている。おまけに、「お金貸して」と頼んだのだ。それ迄していた雑談の中で「一人で生きて行くんだ」と散々言っておきながら、そしてオジサンに「弱虫」だの、何だのと言っておきながら、「金を貸してくれ」と無心するが、ホームレスが金を持っている訳もない。すると、マリは、オジサンの所に「泊めてくれ」と言い出す。オジサンの屯しているのは公園のベンチ。毛布1枚被って寝ているわけだ。そこへ強引に潜り込もうとするマリ。オジサンは、通りすがりの者に、変な誤解をされることを恐れて、兎に角、「帰れ」と諭すが。マリは結局、公園で一夜を明かすことにして、近くのベンチに蹲り、いつの間にか寝て仕舞った。その時、彼女が持っていた紙に目を落としたオジサンは、事情を深く理解する。そして、1枚しかない毛布をマリに掛けてやると、自分は毛布無しで過ごし、朝早くから稼ぎに出掛けた。やがて目覚めたマリは、オジサンが居ないことに気付くが、何処に行ったかは分からないまま、公園に居ると、一人の青年がやって来てベンチに座った。パンをマズそうに食べている姿を見て、お腹が鳴る。(足したよ2014.7.9)
    パンをねだるが、最初は断られた。彼女が好きだったパンなのだが、彼の好みではない。何れにせよ、マリは、パンをゲットし、青年と話し始める。彼の名は、久保。彼の様子から久保が自殺を考えていることを見抜き、訳を訊ねる。訳は彼女に振られたことだった。それで自殺を考えていたのだが、マリは、昨日、おじさんと話していた時に見掛けた、新興宗教の教祖達が、どうやって信者を獲得して行くかを見ており、それを応用して、復縁させようと目論んだ。その為には、彼女の情報を得なければならないので、久保に彼女の名前やこれまでの経緯を訊ね、そのデータを仕込んだ上で、彼女、良美の働く店へ出掛け、彼女と会って、預言者のふりをする。データは久保から得たものだから正確である。良美はまんまと嵌って、仕事が終わった後、久保と打ち合わせておいた場所に来てくれた。こんな経緯で二人は復縁したが、オジサンが仕事から帰って来て、稼いだ金を貸してくれたので、家に戻って見ると、叔母さんがしょんぼりしている。一所懸命、マリを探したが見付からない間に、お母さんは亡くなっていた。
     長い時が流れ、新興宗教はそれなりの規模を持つようになっていた。偶々、この団体が主催している洗脳施設でオジサンを見掛けたマリは、是非とも、またオジサンに会って借りた金を返したい、と願うが見失ってしまった。教祖によれば、教団に居れば、また会えると言う。そこで、マリも教団で暮らすことになった。教団の教えは、不幸な過去を捨て去り、完全に忘れて、ハッピーに生きることであった。マリは自分の身勝手で、母の死に目に会えなかったことだ。一旦は、教団プロパーらの説得により、過去を忘れ、アイデンティティーを喪失して、何者でもない存在を目指そうとしたが、持ち前の知恵が、それを拒ませた。その為の授業料は、貢ぎとして支払うことになったものの、彼女は、傷だらけの人生を背負ってゆく道を選ぶ。オジサンにも思い出して貰った。母に宛てた作文を取り出し読みだす所で幕。
     無論、これを読む、という演出も、シナリオもあり得た。然し、読まなくてグレードが一段上がった、と考えたい。演出家は、観客に想像して貰うことを選んだのである。こんな時代、自らの頭で考え、判断し、生きてゆくことこそ、肝要である。これはその事を意識した作り手からのメッセージであろう。
    マリを演じた梨澤 慧以子も、元気で世知のある子供を演じた演技が気に入ったが、オジサンを演じた植吉の演技が良い。また、マリの勝手な行動の結果、母の死に目に会えない、というシナリオのリアリティー、オジサンが弱虫と罵られて一念発起、職に就いているのも良い。

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    2014/07/08 21:36

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