第11回シアターX(カイ)国際舞台芸術祭 公演情報 シアターX(カイ)「第11回シアターX(カイ)国際舞台芸術祭」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    夢の見方
     いつも通り上演後に、出演者達と観客の質疑応答、作品解釈などに関するアフターミーティングが、ロビーで持たれた。日本だけが関わったのは、2作目、他は韓国と日本、フランスと日本とのコラボであったが、日本だけのものは、イマジネーションの質が、内向的で独りよがりになっているようで、自分には、余り面白く感じられなかった。詳細はネタバレで。

    ネタバレBOX

     7月3日に上演された1.劇団MIRレパートリーシアター「夢見る木と世界の終わり、そして踊る彼女」(日韓合同作品)2.保坂 尚代ダンスワークス「因幡の白ウサギは神になる?」(日本】3.プロスペクト・テアトル+アンサンブル室町「夢の色彩」{(マルグリット・ユルスナール 東方綺譚より)日仏合同}演者達による其々の作品解釈・説明で若干気になったのが、2番目の因幡の白ウサギの話であった。明らかな間違いと思われる点が、いくつかあったことである。一つは、ワニを爬虫類のそれと混同しているかのような発言が、兎が彼らを騙して越えた水域を川と表現していたことだ。これは、隠岐と気多の岬(現在の鳥取市)の間の海である。イルカなら淡水性も居るが、鮫は、海水に住む魚類である。恐らく、ワニ(自分も母がたが鳥取なので、大型の鮫をワニと表現するお年寄りが居たことを知っている)という方言から、爬虫類と混同したのであろう。古事記の研究会のことも口にされていたが、古典を読むということをなさるのであれば、注意深くお読み頂きたい。
     さて、三作の講評と参りたい。
    1は、背景に様々なイメージと字幕を適宜映し込みながら、舞台上では、ダンス表現・舞踏など、身体を用いて、荘子の「胡蝶の夢」を仲立ちとしたストーリーを展開させる作品。無論、効果音も流れてくるのだが、これらのコラボレーションと現代我々の「謳歌」している文明への疑義を呈して、秀逸。三作品の中で、自分が最も気に入った作品であった。今作のテーマは、命。その源の水から始まって始原の生命が誕生。生命の進化即ち分裂が、意識・文明を生み、文明は独自法則で発展して命を蝕み滅ぼさんとするが、滅びの刹那、漸く本義に気付いて再生を遂げる一大叙事詩だ。
    2は、白ウサギが、鮫を騙して生皮を剥がれ、その後、求婚の為に気多に向かう神々から、教えられた処方に従った兎が、酷い目に会う部分が総てネグレクトされている為、原作にあるストーリーのダイナミズムが無く、話は平板になってしまった。神など所詮、人間の発明したイリュージョンに過ぎないので、そんなものを身体という不自由な表現媒体だけで表現しようとしても極度の抽象が伝わらないのは当然である。そうしようと考えるなら、アドルノの下降弁証法のような発想のパラダイムシフトが必要であろう。神ならぬ身で、神というエーテルのようなイマージュを取り込めるわけは無いのだ。
    3は、ユルスナールの東方綺譚からの抜粋だ。ヨーロッパ(仏)ダンサーと日本舞踊のコラボレーションだが、音響として鼓が入る。たが、女性が打っているので、瞬発力が弱い。時空を切り裂くような叩き方になっていないのだ。この辺り、緩急をキチンと叩き分けて貰いたい。ユルスナールの原作のラストシーンでは、描かれているモデルの女が、死後、絵の中に現れ、絵描きが、絵の中に陥入して、皇帝の目の前で、小舟に乗った二人が絵の中で沖に向かって消えて行く所で幕という異様に美しい世界で終わる。今回は、演出家の気に入ったフレーズを断片として取り出し、改めて嵌め込んで再構成しているので、全文を読んだ方とは、異なる解釈も生まれてきそうだし、それが狙いということもあるだろう。今作は、2番目に気に入った。★は1が5つ、2が3つ、3が4つ。全体評価4つだ。

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    2014/07/04 14:49

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