満足度★★★
夏クソ暑く冬かじかむほど寒い京都盆地の青春グラフティー
京都の大学3回生の可能であったらやり直したい、をオムニバス形式の朗読劇に仕立てた作品。中退してしまったものの、自分も2回生を終える迄、京都の大学で学生をやっていたので、土地の感覚が非常に懐かしい。
新歓の際、どのサークルも勧誘の為に、様々な企画を立てて新入生を誘うのが常だが、その中で、主人公の私が興味を持った3つのサークルの其々に入ったとして主に、1、2回生の時代を描いた青春物だ。が、シナリオが可也長く、シチュエイションに重なる部分がある物を3回繰り返すことになると、余程、朗読する側に力量が無いと、観客は退屈してしまう。読み物としては、他の楽しみ方が可能だとは思うが、朗読劇にこういう作品を選ぶのは如何なものか? 著作権の問題があるので、いじれないだろうから、自分なら選ばない。仮に選ばざるを得ない場合、著者と交渉して朗読作品として、面白い物にする為に、もっと、千年以上の都としての歴史を持つ京都を掘り下げる。出町が出てくれば、鞍馬や貴船迄話を飛ばす。そうすれば、樋口のキャラや神の超越性ももっと生きて来よう。このような箇所が他にもたくさんあった。現代の描き方は、まずまず面白い。猫ラーメンの話などもグーだ。残念なのは、演者の年齢が若く、技術も拙いのに、これだけ長時間の物をやらせるというのは、演出に疑問を感じるのも事実だ。脚本を持っているのに噛む。テキストの分量が多いので、じっくり考えて間を取ることが出来ない。無論、科白は、自分のものになっていない。序盤に特にそれが酷かった。観客は、最初の数分で、劇団であれユニットであれ、演ずる者達の力量を量ってしまう。自分の場合は、先ず、十数秒から1分である。それで力が無いと判断すれば、集中できない。今回拝見して、自分のめがねで合格を出せるのは、樋口を演じた谷 伸二氏だけだ。主催の方には、ご自分の好みばかりでなく、演劇そのものの正体を探って頂きたい。