「花や…蝶や…」 公演情報 演劇ユニットN.A.S.「「花や…蝶や…」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    artの意味する所
     江戸時代の吉原を舞台にした花魁、吉桜と飛龍一家の足を洗っていた次男坊、掟之心、鮫肌一家の跡取り金治の三角関係が、吉原を二分するヤクザ者同士飛龍一家と鮫肌一家の敵対関係の中で展開する悲恋物語。

    ネタバレBOX

     左腕に蝶の痣がある花魁、吉桜(もと夜)は、父と居た所を暴漢に襲われ、父の気絶している間にかどわかされ女衒の手を通して吉原に売られてしまう。偶々、売られた店、白波楼は、中々人情の分かった店で、お上、亭主も、また実際に姉さんとして面倒を見、芸を仕込んでくれた花魁、睡蓮も目は不自由乍ら、極めて優しく情にも厚い女であった為、比較的恵まれた状態で暮らし始めた。然し、はぐれた父の様子も分からず翌年、桜の祭りには就き出しが決まった。睡蓮の仕込みが良く、吉桜自身、芸を磨いたからでもあった。
     然るに、女衒の所で一緒だった朝は、吉桜の為に自分は、苦労を背負いこまされ、日陰ばかりを歩かされてきたと誤解し、彼女の最も大切な者を奪って復讐しようと誓う。
     そこで、彼女の実父の経営する飲み屋へ行って、自分が、彼の娘だと嘘をつき、敵対関係にある飛龍一家と鮫肌一家との抗争に乗じて、吉桜には、掟之心が死んだと告げ、掟之心には吉桜が死んだと告げる。
     互いの事情を納得する迄、話さず早合点し合うことで、敵対関係を亢進させてきた両一家、抗争となって金治は、掟之心を殺害。目の前で恋する者の命を奪われた吉桜も後追いを望む。この心を汲んで金治は、彼女も一緒に冥途へ旅立たせてやるが。
     基本的にロミジュリの骨組みに廓のヤクザ組織を当て嵌め、踊りや殺陣をパッチワークした作品でオリジナリティーに乏しい。ユニット形式を取らざるを得ないのは、朝岡の性格にもよるのだろうが、全体をキチンと筋の通ったポリシーで見せることが出来ないのは、舞台監督という立場の弱さであろう。同じ職人技のパッチワークを作るにしても、キチンとした演出家が、筋を通して欲しかった。拝見した限りでは、何とかパッチワーク風に組み上げた出来の良くない織物という印象である。
     但し、廓言葉は、時代考証をキチンとしたもののように思われるし、朝岡の踊り、玄海 竜二の殺陣は、見事なものであった。だが、演劇は突出したスターだけで作るものではない。この点、アートという言葉の持つ二つの意味のうちの職人芸のみならず、芸術性を目指して欲しいのである。

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    2014/04/13 10:44

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