大きなものを破壊命令(再演) 公演情報 ニッポンの河川「大きなものを破壊命令(再演)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    全ては役者からくり出される
    “何やら大きな力に対峙する人々”を描いた作品”とのことだが
    まさに“対峙する”人々が躍動する舞台だった。
    並走する複数の物語を瞬時に切り替えるのは
    舞台の隅の丸いボタンを「かちゃん!」と力強く踏む照明のON &OFF。
    手にしたカセットを自分で入れ替えながらBGMを流すという超アナログな手法が
    役者の台詞と絶妙にマッチして一体感ありまくり。
    四方から観ている観客と対峙する緊張感にあふれた60分。

    ネタバレBOX

    両国国技館のように四方から客席に囲まれた舞台。
    天井から様々な照明器具が下がっていて、どれも柔らかな光を放っている。
    四隅のうち三方には自転車が吊り下げられている。
    舞台の端に丸いボタンが設置されている。

    これからボルダリングかバレーボールの試合でもするのかといったいでたちの4人、
    カセットテープをポケットに詰め込み、ウォークマンや照明器具を装備して登場する。
    ①熊谷の首絞めジャックをやっつけて俺が一番のワルだってことを証明してやる
     と息巻く14歳の神林衛(佐藤真弓)と先生、仲間たち
    ②ラバウルのジャングルで、軍を脱走して来た4人姉妹が
     小さな葉音にも緊張しながら敵の襲来に備えて銃を構える
     そんな中でも鎌倉育ちの4姉妹はかつて叔父様が持ちこんだ
     長姉の縁談の話、夏祭りの夜の話で盛り上がる

    とういう主に二つのストーリーが交錯しながら進むのだがその切り替えが実に鮮やか。
    台詞、動き、照明、BGMを繰り出すのが全て役者だからタイミングに勢いがある。
    何か自分より大きなものに対峙する時の緊迫感が伝わってくる。
    それが真剣であればあるほど、傍で観ている私たちは可笑しくてたまらない。

    場面が目まぐるしく変わるのにつれて、キャラも180度変わるのがまた楽しい。
    中学生からいきなり艶やかな声、小津映画みたいにちょっと早口で
    「…ですのよ」なんて言う。
    あれは原節子か山本富士子かという印象だが、とてもこなれた感じで素敵。
    佐藤真弓さん演じる14歳の神林衛が生き生きと悪ぶってとても魅力的。
    たおやかな姉が“叔父さん”になったりするから目が離せない。
    “身体を開く”お姉さまと、鳩の鳴き声と動きにはホント笑ってしまった。
    中学からラバウルへ、瞬時に切り替わるキャラにブレが無く、その集中力が素晴らしい。

    何だろう、この面白さは…。
    他のスタッフがやればいい事を自分たちでやって、手間はかかるし順番は気になるし、
    腰回りは重くなるし、衣装に色気は無いし。
    だけど首絞めジャックにも鳩にも、“マジで対峙する”姿には素直な強さがある。
    遊びにも見える4人の役割に、野外劇のように素朴な“なんでもやらなきゃ”感がある。
    演劇にはこんな表現があって、こんな見せ方があるのだということをおしえてくれる。
    このコンパクトな構成に充実の台詞、福原充則さんの脚本・演出に魅了された。

    自転車のライトが花火になる抒情的なラストがとてもよかった。
    破壊しようとして立ち向かった結果、逆にやられてしまった者の末路が美しい。
    役者陣が皆楽しそうに演じているのがわかる。
    書くのも演るのも大変だろうけれど、またこういうのを観たいので宜しくお願いします。
    ただチラシが読みにくいのよね…(^_^;)


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    2014/03/05 20:59

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