星ガール 公演情報 多少婦人「星ガール」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ストレス
     舞台美術のセンスの良さに驚かされた。誰でも宇宙船内部だと分かるし、全体的に白を基調にした壁なので清潔感があるのだ。椅子などは有色だが全体とマッチしているので落ち着いた雰囲気である。照明は、適確で上手いと感じたし、音響は、如何にも女性のポップな感覚が表現されていて好みである。また、男性の書く理論に走りがちなSFではなくて、人間関係調整の物語を、途轍もなく長い宇宙航行の宇宙船内という逃げ場のない空間設定に置かれた人間達の物語とした所に、この作品の斬新さ、面白さがあると同時にリアリティーもあるのだ。

    ネタバレBOX

      どういうことかと言えば、同じ面子が朝から晩まで、面付き合わせていなければならないので、退屈する。その度合いは、苛めをゲーム化して陰湿化するのではなく、心理的楽しみとする所迄進んでいる、といった具合だ。
    目的の星、クルカ星に辿りついたクルーは、現地で資源探査と採掘に関わっていた地球人、油井を収容して帰途に就くが、油井はクルーの異様な精神的安定に疑問を抱く。通常、狭い空間に長時間閉じ込められるような状況で、人間は、精神のバランスを崩し、ストレスの為に、殺伐とした精神状況に陥るものだからである。彼は、船内でクルーを観察、或る事に気付く。それは18時から20時の間にクルー全員に配られる薬についてであった。処方している医師、向井は、皆の食事の準備などもしているのだが、毎日、必ず、自分がクルーの所へ出向いて薬を服用させていた。然し、ある日、処方が若干遅れたことがあった。その際現れた、クルー個々の異変は、矢張り、薬の副作用を疑わせるに充分なものであった。油井は、向井に問い詰める。そして分かったことは、クルー全員が国家プロジェクトのモルモットにされていたこと、薬の服用が、航行中のアクシデントなどによって予定より長引いた為、副作用が出やすくなっていること。薬効は、欲求の抑制にあること等であった。つまり、食欲、自己主張、性欲などを抑える効果があったのである。油井は、薬を飲み続ければ、副作用が増大すると考え、この薬を隠してしまいクルー各々に異変が生じる。薬を欲しがるクルーとの問答中、一旦身を隠した油井は、一日分の薬だけを持って皆の前に現れ、争奪中に総ての薬を飲んで、生きる意志を失くしてしまうが。緊急処置によって、大したことにはならず、無事、帰還を目指すことになる。
     薬によって、抑えられていた欲求のうち睡眠に関しては、余り積極的な表現が無かったように思うが、長期に亘る閉塞状況を問題にしている点と、薬を用いて、ストレス解消を図ろうとする発想については、かなりリアルに感じた。治験の際に通常採られるプラセボなどに関しては、この船で、治験が行われていることを示唆する表現はあるものの、つまり、他の船のデータを政府は持っているので、比較はできるというレベルより、厳密な科学的思考の為には、入れておいた方が良い。


    0

    2014/02/17 15:28

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大