燕のいる駅 公演情報 Theatre Polyphonic「 燕のいる駅」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    上手い
     チケットに開けられたパンチが燕なのだ。これで、一気に気に入ってしまった。期待は裏切られなかった。A castを拝見(追記2014.1.19)

    ネタバレBOX

     日本4番駅に集まった者は全員で7人。弟と待ち合わせた裕美 販売店従業員、戸村 駅員三郎と 高島、売れない漫才師、鈴木と本多 謎の男、佐々木だが、三郎は外国人認証バッジ(赤)を常時襟につけている。準日本人として扱われているが、他に黄色や緑色もあり、こちらをつけている者には大きな制限が課せられている。かつてナチスがユダヤ人にマークをつけさせたり、現在イスラエルがパレスチナ人に対して行っている具体的な法的差別だけで55もある実体を思い起こさせる。実際、現在イスラエルのシオニスト達がパレスチナ人に対して行っている差別は、ハーバード大学のサラ・ロイ教授の指摘する通り、かつてナチスがユダヤ人に対して犯した犯罪的差別と本質的に変わらない。(詳しくない方の為に説明しておくと、サラ・ロイ教授は、ガザに関する研究では世界トップクラスの研究者であり、彼女の両親は二人ともホロコーストサバイバーである)
     さて、今作の話に戻ろう。この駅には前夜最後の列車が出てから、一切列車の発着が無い。連絡も一切無いのだ。線路が何らかの理由で途切れたのか、来るべき列車が爆破されたのか、或いはもっと大きなカタストロフの為に、総ての連絡が途絶えざるを得なかったのか。一切が五里霧中である。残った人以外は、昨夜集落を発っていた。駅員達の休憩室の隅には、パンダのような模様の蜘蛛が居座っており、徐々に大きくなっている。
     改札ロビーに居る漫才師の内の1人、鈴木はキンキン声で癇に障ることばかり言い続けるクレーマーである。皆が迷惑がっているのを一切顧慮することもない。おまけに、裕美を戸村が休憩室に招じ入れると、自分達もロビーではなく休憩室で休ませろ、と捻じ込んでくる。仕方なく招き入れるが、相変わらずの無頓着で、他の人々に迷惑ばかり掛けている。そうこうするうち、集落を見回っていた三郎が帰ってくると、途中で奇妙な男を見掛けたと話す。鈴木は、「その人、何か知っているかも知れない」と連れてくることを提案。「既にロビー迄は連れてきている」という答えに直ぐ、皆で行きそうになるが、この男、酷く引っ込み思案で皆で行かない方が良い、と三郎1人で迎えに行き、何とか皆の所へ連れて来たものの、佐々木は緊張の余りか、素っ頓狂な声を張り上げたり、殆ど意味不明の言葉の切片を吐きだすだけで、ロビーへ逃げ帰ってしまった。三郎が再度呼びに行き、何とか連れ戻す為の条件を聞き出すことに成功したが、その条件とは、知らんぷりをしていて欲しい、ということであった。そこで、皆は、対策を練り、最初、休憩室に居る人間の数も減らし、奥に隠れた人達を呼び出すきっかけの合図も決め、佐々木を会話に巻き込む算段も整えて待つことになった。皆、自然を装いつつ、尻取ゲームをして佐々木を巻きこむことにしたのだが、佐々木から何とか聞き取れた言葉は、蜘蛛が大きくなったら、終わる。段々、耳が遠くなる。など漠とした話だけだった。だから、何故、何の連絡も入らないのか? 何が起こったのか? など皆が知りたい情報の核心は一切分からないまま、不安だけが募ってゆく。唯、三郎が矢鱈に眠ったり、誰彼と無く少しずつ耳が聞こえ難くなったり、弟を探しに実家へ行った裕美の帰りが不自然と思えるほど遅かったり、食糧が切れたので、食品を扱っている店へ行ってくる序に、裕美の家へ立ち寄る、と言って出掛けた戸村の帰りが矢張りまだだったりということが重なり、佐々木もいつの間にか姿を消して、不安ばかりが大きく重くのしかかってくる。漸く、戻って来た裕美は、食品販売店の前で佐々木を見た、と言う。然し、動いていないようだった、怖かったので確認はしていないが、と報告する。前後して、漫才師達は徒歩で脱出を図っていた。駅舎内に居る者は、終に世界の終わりを覚悟する。蜘蛛はどんどん大きくなっている。
     不安の増してゆく不気味さを、曖昧な情報を流しておいて、出掛けた人の帰りが不自然に遅いと感じられる残った人々の心理で描き、1人、1人、何か調子がおかしくなってゆく様を、実に示唆的に、完璧な表象で表してゆく所が凄い。
     実は、今作の後、短編が1つ上演される。楽しみにして欲しい。

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    2014/01/15 12:47

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