カルメン 公演情報 シアターカンパニー 象の城「カルメン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    日本の情況でどう生き残るか
     構成としては現代に視点を置き強調したい点があっての現在を過去の物語が包み込むような二重構造になっている。女子大生、咲が銃で脅され、廃ホテルに人質として監禁されたのが発端だが、犯人は凶悪には見えない。咲きは彼に事情を訊ねる。彼が話したのは、メリメの名作、「カルメン」に似た情熱的な話だった。

    ネタバレBOX

     時間軸にずれがあるが、もう少し落ち着いたら、内部から声が上がるだろう。さて、彼、ドン・ホセの話した内容である。時代は19世紀半ばのスペイン。ホセは元騎兵である。但し、カルメンが人を殺めた時、彼女を逮捕しそこなって3カ月謹慎させられた後、上官であった中尉の門衛に任命されて働くことになった。が、カルメンは中尉とできており、ホセがカルメンを口説いている席に中尉が現れた為、カルメンにのぼせ上っていたホセは中尉を殺し、追われる身となった。成り行き上、カルメンの紹介で彼女の属する密輸グループに加わることになるが、殆どのメンバーがジプシーなのに、ホセが仲間になることを認められたのは、ルーマニアで奴隷として遇されていた彼らが解放され、パイロ(ジプシーから見てジプシー以外の人々)との関係が改善されつつあったことに関係がある。後半のストーリー展開は観てのお楽しみ。
     原作を強調した部分に愛と自由、信と不信や宗教などのテーマが目についたのでちょっと気をつけて観ていると、若いメンバーで構成されているこのグループにあっては、今、殊に此処で生きるに当たって喫緊の課題は不信であろうと気付いた。
     企業は嘘ばかりついて、実際にはこき使い、おまけに使い捨てを歯牙にもかけず、それを問題にしようともせぬばかりか、政治と結託している。その証拠に、日夜仲間と食事会やゴルフに現をぬかして「国家」を私物化しているにも拘わらず、真反対の明日に夢を持てるような社会づくりなどと嘘しかつかないことに、己自身が気付かない程の阿保を首相に据えて恥を知ることもない大手産業会及びマスコミとそれに踊らされていい気になっている愚集ばかり見せつけられれば、どんなに鈍感であっても、若いというだけで信じられないということだけはわかるハズだからである。
     このように乱れ切った現代日本を19世紀中葉の矢張り乱れ切ったスペインに置くことで、其処に生きる不信感そのものの被差別民の持つ、不完全との認識すら持てずに求める自由と、彼らの自由にすら至りつけなかった哀れなスペイン旧社会の真面目さが哀しいまでに滑稽な普通の青年のドラマを演じてみせたのだ。無論、このドラマを悲劇とするか喜劇とするかは観客の判断に委ねられている。
     ところで、カルメンの至り着いた自由は、ほんの一歩目に過ぎない。第1、男に頼るという所から一歩も出ていない訳だし。完全自由が何を意味するのかを考えたこともない女として描かれていることも事実である。
     また、上演に当たっては口立てで舞台の科白をつけ、出演者達の素を引き出すよう努めたという。演劇の専門大学があり、基礎訓練をきちんとしている国々と日本はその辺り、根本的に事情が異なるので、本質勝負を掛けてきたわけだが、そうであったも、演技のタメは最低限必要だ。科白は観客に届けば良い。が鳴りたてたり、叫んだりする必要は、基本的にはない。それが必要な場合は物語の展開状況が要請するのである。呼吸法などによる身体制御も無論必要だ。以上挙げた点が舞台上で実行できなければ、役者の存在そのものを舞台上に曝け出せなければ、観客を引きずり込み、熱狂の坩堝に叩きこむことはできない。作家、演出家は、ここ迄考えておく必要があるのは当然のことである。高い物を目指すのであれば尚更だ。今後に期待している。

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    2014/01/05 14:31

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