星降る闇にピノキオは、青い天幕(サーカス)の夢を見る 公演情報 天幕旅団「星降る闇にピノキオは、青い天幕(サーカス)の夢を見る」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    バイタルサイン
    本歌取りファンタジー今回は「ピノキオ」と聞いて
    “少年っぽさ”と“硬質”な台詞のイメージから
    何となく加藤晃子さんのピノキオを想像していたが、見事に違ってた。
    渡辺実希さんのピノキオは、繊細で壊れやすく孤独。
    原作のピノキオなら加藤さんだが、これはやはり渡辺さんが相応しいと思った。
    今回も4人の身体表現が美しいが、少し動きが多くて落ち着かなかった印象も残る。

    ネタバレBOX

    コオロギ(加藤晃子)が暖を取ろうと入り込んだ家には壊れたピノキオ(渡辺実希)がいた。
    「僕の話を聞いてくれるかい?」と人間の子どもになれなかったピノキオは
    自分のこれまでを語り始める。
    お父さんのゼペット(渡辺望)に作ってもらったこと、学校へ行ったこと、
    ペテン師(佐々木豊)に騙されてサーカスに売られたこと、
    大鯨に遭って海に沈んだこと、やっとこの家に戻ってお父さんと暮らしたこと、
    そのお父さんが死んでしまって、長い間ひとりでこうしていること。
    そしてピノキオはコオロギにひとつの頼みごとをする…。

    原作ではピノキオに説教して殺されてしまうコオロギだが、ここでは
    ピノキオの話を聞いて、それを観客に伝えるという狂言回しの役割を果たす。

    原作の“言うことをきかないピノキオ”なら加藤晃子さんが適役かもしれない。
    しかしコオロギが出会った、もう首も動かせないピノキオは、
    嘘と気付きながら運命に抗った”絶望のピノキオ“だ。
    死の直前、ゼペットお父さんがその手で包み込んだのはピノキオの硬い木の頬だった。
    でも彼は「温かいね」と言った、そんなはずないのに。
    「ピノキオが人間の子どもになる」というのは孤独なゼペットの願いだったのだ。
    それがそのままピノキオ自身の願いになった。

    壊れて少しずつ傾いていくピノキオの身体の動きが美しく哀しい。
    冒頭いきなり“ピノキオのなれの果て”を見せ、
    コオロギに語り、コオロギに終わらせてもらうという構成が上手い。
    静謐でなめらかな動きのうちに行われる場面転換や
    ピノキオが絶望して胸を叩く時の、コーンという音も澄んで美しい。

    若干物足りない感じがするのは、ダークな部分がさらりと描かれたせいだろうか。
    「白雪姫」のあっと驚く多重人格のコビトや、
    「クリスマスキャロル」の衣服を使った演出と、スクルージの二面性
    「ピーターパン」でシルバーが見せる表裏のある人物像など
    “人の多面性”特に黒い部分にスポットライトを当てる視点が冴えた舞台を思うと
    えぐり方が優しい印象を受けた。

    流れるような動きは美しいが、誰かが視界を横切る事が多くて
    もうちょっと中央のピノキオに集中したいと思う時があった。
    動きのメリハリがあったらもっと良いと思う。

    衣装が素敵で、ファンタジーらしい楽しさがある。
    シンプルなピノキオの衣装が本当にかわいい。
    ピノキオの鼓動はゼペットが作ったたくさんの時計と共にようやく止まった。
    渡辺ピノキオ、人生も天幕(サーカス)のように跡形もなく消えるんだね。

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    2013/12/06 02:47

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