DIVISION POINT -分岐点- 公演情報 いいむろなおきマイムカンパニー「DIVISION POINT -分岐点-」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    観なきゃ損するぞ!!
     久しぶりにマイムらしいマイムを観た。Mimeは、元々無言の道化芝居であるから、科白は無い。そんなわけで、余り複雑な表現、混み入った表現をするのは、至難の業である。この弱点を克服する為には、シナリオを良く練り、内容が身体表現だけで、観客に読み込めるよう、合理的・理論的に筋を通す必要がある。無論、それが出来た上でなら更に高度な表現にもチャレンジできるが、先ずは屋台骨がしっかりしていなければならない。(ネタバレ追記2013.12.3)
     

    ネタバレBOX

     本作で言えば、のっけ、低い明度の中、白い紐が1本登場する。その上で手袋をした手が、綱渡りをしたり、若干、アクロバティックな動きをしたりした後、最初、1本であった紐が二又に分かれる点などである。これは、タイトルのdivision point ともう一つのコンセプト decisionに呼応しているのは無論のことである。この二つのコンセプトを繋ぐ遊びとして椅子取りゲームに想を得たパフォーマンスや、列車を用いた出発のイマージュが演じられるが、途中、毛色の変わったオノマトペを用いたような即興パフォーマンスが入ったりして、場面転換を図り、リフレッシュ作用を齎す。科白を用いないというコンセプトなのに反則と考える向きもあるかも知れないが、オノマトペに意味は無い。場転と笑って許して欲しい。マイマーは全部で7人、その中に作・演出のいいむろ なおきも入る。
     先に述べたようにストーリーに列車が絡んでいるので、小道具に汽車が出てきて宙を舞うシーンでは「銀河鉄道の夜」を彷彿とさせる。この時、明度を落とした中で手袋が鳥のように羽ばたくことで浮遊感覚を観客の心に見事に呼び込んでいる。この為、こんなに小さな小道具が、銀河鉄道迄膨らんでゆくのだ。
     このようにイマージュの欠片を象徴的に用いて極めて広く深いイマージュを観客のイマジネーションとの間に紡いでみせる。このコレスポンダンスの見事さに、作・演出の素晴らしさと同時に演者としても関わる、いいむろ なおきの才能が煌めいている。そして、それが、マイムという形式のパフォーマンスである以上、どんどん変わってゆき、形を変えて行くのであるが、例えば、明度を落とした舞台の上に立つ人の回りを鳥のように舞っていた手袋達が、彼の体に寄り添うように貼りつくと、人は其処から抜け出てしまう。砂上の楼閣のように残ったヒト型の慄然たる美。更には、decisionの演目に移る際、宙から落ちてくるシーンでは当にどんぴしゃりのタイミングでスポットライトが当たる。本当に宙から落ちてきたかのような錯覚を起こさせるほど、難易度の高い照明、音響とのコラボも見事である。
     オープニングでは、division開始を他の者が、指示していたのだが、ラストシーンでは、オープニングで指示を出していた人物からイニシアティブをとり、decisionに移行する。この辺りの論理構成力も見事である。

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    2013/11/29 02:38

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