満足度★★★
唐十郎イズムのその先は?
ひさしぶりのテント公演。しかも初見の劇団なので不安と期待が入り混じる中の開演待ち。のっけからBGMと、青白い顔の黒服の男女が現れて、一気に「非日常の物語」へ誘われました。まさに唐十郎さんの遺伝子を受け継いだ、怒涛のイメージの連鎖が、個性的な役者たちの口から矢継ぎ早に吐き出される。迫力はまさにテント芝居。
だけど…なんです。作家の男の「書けない」という葛藤は分かるにしても、幽霊船に恋文を書き続けた女の激情の在り処が分からないんです。理解を超えた言動に隠されたものが、まったく見えない。多分、そこをどう考えるかが一番挑まなきゃならんところではないか? 例えば、凡庸だけど出自とか家族の過去とか。単に第五福竜丸の事件や夢の島という土地をにおわせても、幽霊船に恋をするという「理解を超えた行動」の根拠には、そう簡単にはなりません。一番観たいところが、観れなかったのが残念。
それと、BGMを多用しすぎだと思います。役者ががんばっていたのに、せりふが聞き取れない箇所があって、もったいないと思いました。曲で雰囲気を作るより、役者に任せるべきところは任せてほしかった。