満足度★★★★★
一期三会
まさか3バージョン観てしまうとは。初見の劇団については、「一期一会」とい
うことを基本にしているので、今回も1バージョン観て、次回公演も観るかどう
か決めようと思っていたのですが、想定の斜め上をいく笑いのマシンガンにすっかり惚れ込んで、俄然全バージョンを観る気に。土日のほとんどをMCRに捧げました。
3話とも登場人物は同じながら主人公を変えて、一家の団欒やら、学校の風景やら、空き地に住み着いた猫の日常やらをテンポよく切り替えながら、別々の物語を描いていく本作。各役者にはゼッケン着けさせて、名前と属性(例、○○家父、母、長男など)を裏表に記し、観客に伝える趣向。一見手抜きのようでいて、これが効いてるんですね。同じ登場人物をいちいち説明しないですむのもあるけど、役者のキャラクターを前面に出して笑いを取る、ワル乗りギリギリの演技も許される空気になる。リアルであることを一旦バッサリと捨ててる。ここまでくると、徹底した悪ふざけに突き進んで、ノリで芝居をしそうですけど、MCRがすごいと思ったのは芝居時間の80パーセントで笑いを取りながら、きちんと20パーセントできちんとドラマを見せてることなんです。笑いの中にちゃんと伏線を張って、ラストシーンを成立させる。いかんせん笑いの要素が多く、ドラマ重視というわけではないので、幕切れの余韻に欠けるきらいはあるけど(「猫」のラストは好きです)、それでも3作とも同じ笑いの密度とドラマの積み上げ方に唸りました。笑いも、流行ネタとかテレビネタよりもツッコミの間や言い回しの妙で攻める好きなスタイル。ツッコミのアクロバティックさ(例:プロレス技)は、小劇場界一ではないでしょうか。作・演出・出演の櫻井さん、今後の作品も注目したいです。