SEA HORSE ADVENTURE(シーホースアドベンチャー) 公演情報 マグズサムズ「SEA HORSE ADVENTURE(シーホースアドベンチャー)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    海馬を巡る冒険
     舞台は、我々の脳で記憶を司る海馬と同じ機能を持つスーパーコンピューターが開発され、人の記憶を自由に外部にアウトプット、インプットできるようになった未来の在る時代。主人公は、どこにでも転がっている無特性のサラリーマン、梶原 辰夫。彼は、要領の良い妹とは対照的に何をやっても冴えない。かといって完全な落ちこぼれでもない波風の立たない人生を送っている。妹の結婚も決まり、定年を迎えて暇を持て余すようになった父からは、「お前も早く結婚しろ」とヤイノ、ヤイノの催促。唯一の自慢は、朝7時半にセットしている目覚まし時計の音で目覚めたことが一度も無いことである。つまり、その前に目覚めて目覚まし機能をストップさせているのだ。目覚ましを買って10年ずっとである。(追記2013.9.28)

    ネタバレBOX

     そんな辰夫が、IT関係の社長連中の道楽に己の凡庸さを、凡庸の記憶データを提供する為に,ラボに出入りし、1週間の記憶を取り出しては渡していたが、このラボの研究員の一人が、開発しているスパコンでゲームに興じていた。だが様々な悪条件が重なって、さしものスパコンがクラッシュ、記憶のやり取りをしていた辰夫は、ゲームの世界に閉じ込められてしまう。ゲームの世界には、四天皇がいるが、辰夫は、四天皇と戦い、記憶回復に必要なメモリーストーンを入手する必要がある。3個目を入手しようとした矢先、魔王が介入、ソフトを初期化する作業を開始した。初期化されれば、辰夫は無論のこと、責任を感じてゲームに入って来た研究者、登場するキャラクター総ては灰燼に帰す。
     辰夫とは、自らの特性の無さにうんざりしていたサラリーマンであったが、例え地味でありきたりの人生であっても逃げださずに、それを背負ってゆくことに意味があることを見出し魔王と対決する道を選ぶ。結果、消滅することになろうとも。まあ、最後の部分は蛇足。感覚の鈍い人々向けの駄目押しだ。肝心なことは、ありきたりの人生であっても彼が、それを担ってゆこうとしたこと。そのことに意味・意義を見出したことに在るのであって、それが、絶対的力を持った魔王と戦う根拠になることである。民衆の英雄はここにしかないのだ。意図的・自覚的凡庸、これこそが、民衆的英雄である。
     この点を出したうえで、物語は、これらのストーリーが、ラボ所長と経営サイドの計略だったことを明かす。
     だが、既に民意は示されて在る。例え必敗の歴史になろうとも民衆は支配する者と戦い続けるという民意を。

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    2013/09/21 11:22

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