SUMMER PARADE 公演情報 AnK「SUMMER PARADE」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    淡いもの・こと
     作・演出の山内 晶は、少女漫画好きとか。で“カベドン”などという初めて聞く単語も登場する。話としては、男性型バイオノイド(劇中、アンドロイド或いはR2D2と呼称)とアラビア語で星という意味の那樹夢(ヒト科女性)との恋への道行きである。

    ネタバレBOX

     作・演出家の言うテーマは、「情報のすり替え」と「設定は選べない」ということだが、前者は、会話の曖昧さによる錯誤が齎す諸結果についての感覚的反応を、後者は、無自覚に為してきた結果が習慣、否、寧ろトラウマになり、それが意識化された途端、悪夢のように纏わりつく状態を表象する。
     上記の内容を、柔らかな感性を損なわぬ科白と所作、小道具、照明、効果音で作っている点に好感を持った。
     Boy meets girl.の内容は、互いの顳顬に当てた送受信機に念を送ることでホログラムを作成(単体でも複数でも可能)、自己の内面にあるイメージを視覚化するという方法を採っている。こうすることで、其々が、落ちこぼれとして抱えてきた有象無象を誤解なく伝達することが可能となると同時に、観客に人間及び、人間の鏡としてのバイオノイドの心象風景を実体化して見せている。従って、ここには、苛めと差別、負わされた傷、コンプレックス等々の現代的問題が隠れたテーマとして浮かび上がる。トラウマを抱え、キモイと言われて傷つき、死ねと言われ続けて自己のアイデンティティーの崩壊を目前にしながら、夢を夢見る姿が描かれていると言って過言ではない。
     R2D2が、史上初めて、人間の学校へ入校することになった原因、記憶の消去が不完全で、思い悩むというバイオノイドとしては失格の特性が逆に人間の持つ曖昧さにアダプトし易いと判断された時に、己の心象を訊かれ、楽しかったことを思い出して応える科白の何と美しく詩的であることか。「空を見ていました、宙を。それは、花に名をつけるようには(短い間)その雰囲気を言葉にできません」
     作者は照れ屋さんなのだろう。科白として詩的なのは、このフレーズだけだが、作品全体に、感受性の柔らかさを感じる。

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    2013/09/19 15:06

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