満足度★★★★★
人間性と権力
「読書劇」と銘打たれた上演形態に、大方の読者は朗読形式をイメージするだろうが、さに非ず。寧ろ、少し特殊な演出の演劇と考えた方が良かろう。見沢 知廉の作品から抜粋されたフレーズが、BGMの大きな音にかき消され乍ら言い募られる。舞台観客側には一面に張られた紙に知廉の文章が綴られている。時折、人のシルエットが浮かびあがる。和服の女性、知廉と思しき人物等である。ほぼ暗転した空間内に約10分、音響と言い募りに支えられた濃密な時間が流れ、懐中電灯によって照らし出された文字が浮き上がる。10分も終わりに近い頃、血の色で知廉の文章の上に重ねて文字が書かれる。そして紙が破られると下手には、底の部分まで鉄条網で編まれた鳥籠状の独房が現れ、周りには書籍が堆く積まれているのが見える。書籍は上手床の上にも観客席側にも或いは散らばり、或いは積まれてある。上手観客側には小さな机とスタンド。(追記2013.9.10)