なぜ ヘカベ 公演情報 東京演劇集団風「なぜ ヘカベ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    植民地の知
     “なぜ”という問いが、今作の眼目だろう。無論、直接的には、ヘカベが蒙った数々の不幸への疑問である。トロイアの王妃という地位にありながら何故かくも理不尽で惨めな目に合わなければならないのか? 何故、自分なのか? という本人にとっての理不尽を神と名付けたものに仮託する問いである。

    ネタバレBOX

     この作品のベースになっているのは、エウリピデスの書いたギリシャ悲劇「ヘカベ」で、今作は、ヴィスニユックが風に書きおろした3作目である。エウリピデスにはないテーマがいくつか加えられているのは当然のことだが、例えば盲目の老人(ホメロス)、羊飼いの父と娘(預言者・坐子的存在)が加えられ、コロスも通常のギリシャ劇とは異なる用い方をされている。
     さて、この何故? の果てにヘカベが辿りつくのは、神々からの答えを期待することではない。寧ろ、己の頭で考えることである。生命は、何処からきたのか? 我らは、何故生きているのか? 生きることに意味があるのか? と。
     無論、生物が何処からきたか? については、宇宙の生成にも関わることである。総ての物質はそこから生まれたと考えられるのだから。而も、現在の宇宙は、超高温でもなければ、絶対零度でもない。等方背景輻射があるからである。宇宙全体がどうなっているのかは無論殆ど分かっていないが、それでもブラックホールやホワイトホール、超新星爆発というマクロから素粒子、素粒微子などのミクロまで様々な物質の在り様が少しずつ解明されつつある。その中で、矢張り生命を形作る物質であるアミノ酸が生まれ、電気的刺激や化学反応によってウィルスのような存在が細菌のような存在に進化する仮定も生じたのであろう。(様々な異論はあるだろうが)まあ、我々のような生き物も個体発生は系統発生を繰り返して誕生するので、発生の初期に発達する神経系(脳の古層、視覚など)や下意識には、宇宙にたった1人で存在する恐怖といった原初生命体の怯えのようなものがあるのかも知れない。何れにせよ、そのような絶対的孤独に耐えられないことを知るが故に、我ら、ヒトは神なるものを発明したのだ。従って、苦悩の果てに常識などという通常の人間の考える識域を超えてしまった人間は、裸形を見ずにはすまないのである。
     ただ、風の方法は、知に重きを置き過ぎるように思う。良く勉強しているのだが、もっと自分の居る地域に根差しても良いのではあるまいか? ヨーロッパ流の知は、我らの知そのものではない。シリア問題が切迫する中、アメリカの植民地でしか無いこのエリアで、アメリカが攻撃を掛ければ、その攻撃下で無残・理不尽な死を遂げるのは、子供、女性、障害者、老人など弱者である。アメリカの用いる武器には、DUの含まれる砲弾なども多い。そしてそれらが着弾して生じる放射性核種による被害は、半永久的である。無論、出る放射線は、ベータ線など波長の短いものが多いので内部被曝による被害が多く、IAEA,英米、ICRPなどはこの因果関係を否定し、ダーティーな下部組織は、因果関係を主張する医師、研究者には、殺すなどの恫喝を掛けている。このような事実が存在するとき、米兵が出陣するのは、我々のエリアからでもあるのである。この直接的な危機感を反映して欲しかった。

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    2013/09/07 12:33

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