満足度★★
連関
描かれているのは、木星の衛星、エウロパ、地球、天国の3世界。然しシナリオの論理に必然性が無い為ドラマとして結実していない。この原因は、作家が、各々の場所に固有の体系をではなく、自分が最も簡単に捉えることのできる知識を羅列しているに過ぎないことにあると考える。戯曲が戯曲らしい戯曲として成立する為の最低条件は、描かれた各々の場所で、登場する生き物の個々の事情に即したイメージトレーニングを行っているか否かに由る。今作では、その作業が行われていない。時間、当てにした資金の調達不可、矢張り当てにした人間関係の不如意等々、事情はいくらでも上げることが出来よう。然し、結果はこのようであった。観客に伝わらなかったのだ。これが、最早、陳腐と言えるほどになったディスコミュニケーションに対する新たな異議申し立てである可能性は否まないが、仮に、其処まで意識していたなら、違った形に仕上げただろう。少なくとも、自分が、作・演出をするなら、全く異なる形を採る。
もう一つ、気に掛かる点がある。劇団名である。“かさぶた”という名を名乗る以上、傷が癒えたらサヨナラ。即ち無用の長物、という意識なのだろう。自らを全否定はしないが、全肯定は愚かしい、と思っていると取らせて貰った。表現する者が逃げてどうする?