ベッキーの憂鬱 公演情報 ぬいぐるみハンター「ベッキーの憂鬱 」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ベースを支える底力があるから
    作品としてのトーンというかプラットフォームを作る底力が作り手や座組にあって、 だからこそ、様々な表現が散漫になることなく安定して差し込まれ 冴えていたように思います。

    見応えがありました。

    ネタバレBOX

    会場に入ると、試験の成績順の張り出しや、
    街の風景や、体育館の外観などなど、
    様々な造作が仕掛けられていて。

    開演すると、舞台はたちまちにリズムに満ち、
    素敵に薄っぺらくて作りこまれた、
    スクールライフ(洋物っぽく)が組み上げられていく。
    まずはそこに完成度があるから、観る側もそのトーンのなかで
    様々な表現を受け取ることができるのです。

    ハイスクールミュージカルを彷彿とさせる
    ホームルームのルーティンにしても、
    文化祭のありようや、学級委員や個々のしらけ方にしても、
    休み時間や放課後の雰囲気にしても、
    素敵にデフォルメをされていつつ、
    でも、肌触りに幾つものベクトルでのリアリティが織り込まれていて、
    さらにはその表現にぶれがない。

    そうして、観る側を高校生活のルーティンに浸してしまうことで、
    物語のプラットフォーム上に、作り手の
    創意と洗練を持った更なる表現を自由に差し入れる間口が生まれる・・。

    野球部のダメ部員二人の話にしても、
    その時間の中に置かれると
    よしんば少々お下劣な表現であっても
    そのあざとさではなく、
    内心のありようがクリアに残るし、
    下ネタ的な表現で呼び込んだ失笑の先には
    不良っぽい少年の、実はいいやつさが
    とてもしたたかに切り出されていたりもする。
    女子たちのドライでとても正直な想いのありようも、
    圧倒的な妄想も、
    男子の恋心も、
    様々なベクトルの創意と、遊び心と、したたかさに
    とり散らかることなく、学校の時間として紡がれ、
    織り上げられて・・・。

    ダンスにしても、役者たちがよく鍛えられていて、
    細かいところを流すことなく、確実にシークエンスをこなし、
    観る側をちゃんと委ねさせ、刹那ごとの雰囲気に浸しこみ
    さらにはレベルを踏み出して魅せる部分を
    いくつも作りだしていきます。
    流れや刹那の美しさを湛え、
    時に意外性を秘めた切れをもったダンスがあったり、
    いきなり大技で、
    これなら「白鳥の湖」の黒鳥だって踊れるのではと思わせるような ブレのないスピンがあったりで、
    観る側をあれよと前のめりにさせてくれる。

    生徒会長の外連にも質量があって、
    ヒールとして、 残り全員を背負っての明確な存在感となり
    目を奪う。 演じる役者の立ち姿が目を瞠るほどに冴えていて・・・。
    またロールの舞台の差し込み方も旨いのですよ。
    ドンと舞台に投げるのではなく、
    なにげに手順を踏んだしたたかな空気への紡ぎこみがあって。
    最初にしらっと観る側の片隅に印象を焼き付けておいて、
    そこからしっかりと段階を追ってその在り様を晒していくので、
    唐突感がない。

    どの生徒にも、
    もれなく舞台に埋もれない個性が切り出されているから、
    個々のエピソードが舞台から乖離することなく、
    やがてはそのプラットフォームの厚みとなり
    空気を高揚させ、
    気が付けば、歩むのではなく満ちるように
    観る側をお化け屋敷の世界へと運ばれているのです。

    ストーリーのメインの骨格の単純さを
    まったく感じないわけではないのですが、
    でもベッキーの存在が観る側の意識に置かれることで
    物語そのものの広がりに加え、
    舞台内の肌触りと外に据えられた視線の立体感が生まれ
    それが厚みとなり、、
    そのふくよかさが物語のシンプルさも
    実によく折り合っていて。
    個々の刹那も最終的にはなげっぱなしにされないのもよい。
    特に中盤以降にエピソードたちがうまく束ねられていくグルーブ感には
    がっつり心惹かれたことでした。

    作り手のこのメソッドは
    様々な色の物語を編むことができるキャパを持っている気がします。
    作品を堪能しつつ、
    作り手が、今後このようなやり方で編んでいく舞台も、
    とても楽しみになりました。

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    2013/08/11 11:00

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