波よせて、果てなき僕らの宝島(ネバーランド) 公演情報 天幕旅団「波よせて、果てなき僕らの宝島(ネバーランド)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    なんというオープニングだろう
    開演直後から、想像力を刺激する絵に泣きたいような気持になった。
    繊細な波の音、風をはらんで膨らむ白い帆、美しい動き。
    ピーターパンが殺されて、フック船長は呪われる。
    「笑劇ヤマト魂」時代の作品の再演だというこの作品、
    ダブル本歌取りは、元歌を大きく外れて行く意外性と楽しさ満載の舞台だった。

    ネタバレBOX

    劇場に入ると、舞台の向こう側にも客席が設けられており
    二手に分かれた客席から見下す舞台にはブルーシートがかけられていた。

    やがて始まる息をのむようなオープニングは、私にはまったく想定外だった。
    強い磁力で観る者を一気に海へ引きずり込むような展開が
    舞台表現にはまだまだ無限に方法があることを教えてくれる。

    オウム役の渡辺実希さん、私はこれまで「静」の役を観ていたのだが
    今回「動」の役が水を得た魚の如くとても楽しそうで、生き生きしている。
    美しくて、調子の良い”悪い奴”がとても魅力的。

    作・演出の渡辺望さん、豊かな創作アイデアにはいつも感服するが
    役者としても、ジョン・シルバーの表裏あるキャラクターが素晴らしい。
    この人はクセのある人物造形が実に上手くて、人間の二面性が鮮やか。

    バンダナをパッチワークのようにつないだキュートなボレロ、
    あるいは結んで繋いでデッキブラシや手すりを表現したりと
    衣装や小物の使い方にセンスが感じられる。

    天幕旅団の特徴である流れるようなスローモーションの動きは今回も健在で
    よく訓練した客演陣もこればかりは劇団員に及ばないところがある。
    スローモーションと活劇のメリハリある組み合わせで
    時間の流れを表現したり、“見せる”場面転換が秀逸。
    いつもながら出ハケの複雑さをそうと見せないエレガントな動作も素敵。

    天幕旅団の豊かな発想と“生来の品の良さ”が
    残酷なファンタジーを極上のエンタメにするところが楽しい。
    元歌の底に隠れた人間の本心を掘り出すような作風が好き。
    ティンカ―ベルもピーターパンも殺されちゃうんだよ!
    ピーターパンは”楽しいことを考えないと空を飛べない”んだって!

    あー、つまり私は天幕旅団が大好きなんだと思う。
    だから何を見ても楽しくて仕方がないんだ。
    こんな風にどこもやらない舞台表現を見せてくれる劇団に心から敬意を表したい。

    次は12月に「天幕版 ピノキオ(仮)」だって。
    加藤さんがピノキオかなあ。
    もうどうしようもなくこの炎天の下、12月を想う私なのである。

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    2013/07/19 04:33

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