満足度★★★
ウィーン版「失楽園」?
チラシに謳ってある程度の範囲で書きますと、
皇太子ルドルフの道ならぬ恋を中心にした作品。
まぁ所詮は不倫劇ですよ、不倫の行く先は悲劇と。
こんな軽い印象を持ってしまったのは、甘酸っぱい脚本のせいか、
亜門の耽美な演出のせいか・・・
何だか下世話というか、いわゆる昼メロみたい。
いろいろ美形ところも揃っているし。
難しい政治の話、家系の問題、世界情勢など、
ややこしいことは、あっさりめ。
ハーレークィーン小説のように、わかりやすい、簡単な作り。
キャラクターの内面なんて、殆どありません。
舞台装置は「トゥーランドット」に続き派手です。
出演者が安いせいか(!)これでもかと言わんばかりの、
ダイナミックさがありました。
あと照明の独特さは、これも亜門カラーなんだろうな。
やっぱり「トゥーランドット」と一緒。
似ているのは悪いことではないんですよ、
蜷川や野田だって、全ての作品の雰囲気は一緒ですから。
ただ僕が好きか嫌いかといわれれば、
ちょっと大味すぎというか、垢抜けない感じ、苦手じゃないけど好きでもない。
ワイルドホーンの音楽は流麗で起伏に富んでおり、
聞き応えがありましたが、
いかんせん時期が悪い、「レベッカ」には敵わないなぁ。
耳馴染みしやすい、印象に残る、という面では
クンツェ&リーヴァイのほうが僕的には強烈だった。
これから始まる「エリザベート」へのプロローグとも
見られる作品ですが、
皇帝フランツ、壌晴彦の存在感は圧巻。
お気軽、お手軽なキャラクターが多いなか、
彼はじっと惹きつける締める貫禄がありました。
これ見せられると、後に続く禅ちゃんや綜馬氏は、恥ずかしくて
出演出来なくなっちゃいそう。
ミュージカル俳優ではないので、決して歌が上手いわけではないですが
心に染み入る歌声で、作品に重みを醸し出してます。
あとは、ネタばれで。
あと、香寿たつきは、相変わらずお歌が上手。
笹本玲奈が、ケバケバしいビニールの洋服のような歌声なら、
彼女は、しっとしとしたコットンのような歌声。柔らかくて、
耳馴染みがいい。
オリジナル版に、かなり手を加えて、
全く新しい作品かのようになってしまったとの事。
「レベッカ」同様、オリジナル版のままのほうが、
良かったような気がする。見てないけど。