がんばれ美香子「なにそのタイトルやめてよ」 公演情報 製作委員会「がんばれ美香子「なにそのタイトルやめてよ」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    毛色の違う短編3本立て
    いずれも同じ作者の原作を舞台化したものらしい。
    原作は未読なので、そもそもの、原作自体の構造・ストーリーについて触れることになるかもしれないが、それはわからないので、すべて舞台の感想として書く。

    ネタバレBOX

    <ゴースト 〜四畳半の幻〜>
    つかみはOKな感じの賑やか、というよりはドタバタな喜劇風味。ほとんど笑えなかったけど。
    ありがちで想像の範囲内のオチだったので、途中のやり取りをもっと楽しみたかった。
    途中の展開も、最初の意外性(外国人の住まい)というところから一歩も出ないまま、しかも外国人であるということの設定をそれほど活かすことなく、これまた想像の範囲内の展開で進む。

    外国人という設定(本当に外国人の方が出演していた)ならば、無理に日本語で話すのではなく、彼の母国語ですべて台詞を言わせたほうが、幽霊とのコミュニケーション・ギャップが出て面白くなったと思う。
    もしそうであれば、ありきたりの展開とオチも印象が変わったのではないだろうか。
    オチは、スパッと気持ち良く終わらなかったところに、演出的には今一歩を感じてしまった。

    <がんばれ美香子「なにそのタイトルやめてよ」>
    今回の公演タイトルになっている作品。
    テンポいいし、主人公の美香子が元気でぐいぐいストーリーを引っ張る感じがいい。
    一生懸命で健気なんだけど、ダメなんだろうなぁ、と思えてくる。

    ラストが、まさかの夢オチ(!!)なのには、あまりのことに愕然とした。
    いくらなんでもそれはないだろうって。

    美香子の現在の恋愛などが、小学校のときの事件からずっと影響を受けているということになっているようだが、過去と現在がまったくつながらない。小学生のときの出来事がトラウマになって、というようにはまったく見えないからだ。
    しかも、まったく解決するわけでもなく、「がんばって!」「うん、がんばる!」だけなのだ。これはあまりにも……。

    また、ラストか途中で明かされるのかと思っていたのだが、美香子が話している相手(「ト書き」だったか「地の文」だったか)がなぜ彼女の前に現れたのかが釈然としない。
    例えば、彼女が演劇をやってるとか、小説家志望とかそういうことはなく、強いて言えば、小学生のときの出来事に推理小説が絡んでいるぐらいなのだ。
    そこからの設定ならば、それらしくすべきであろう。
    そうでなければ、彼女にわざわざ「ト書き」だか「地の文」だかが表れる必然性はない。
    「夢オチ」ならば、どうにでもなるのだから、観客を「えっ!」と思わせるぐらいにしてほしかった。
    そして、夢オチならば、夢オチであったとしても、納得のオトシ方にしたほしかった。
    何でもできる、演劇なのだから、もっと発想を飛ばしてほしい。
    暗転後の主人公の台詞は蛇足。

    主人公の美香子を演じた野中沙織さんは熱演だった。ただ、少々幼すぎる反応と、あの衣装はどうかと思うのだが、これは演出の責任だろう。

    <それでも彼女を愛せますか?>
    どんどん話がひっくり返っていくような感覚が面白いと思った。しかし、これもラストがありきたり。主人公が、今度こそは新たに女性と付き合うと見せて……、というのは、あまりにも容易で、ストーリーの展開からもストレートすぎて驚きもない。こういうストーリーならば、せめてラストは意外性で驚かせてほしい。

    また、途中から、説明ばかりが延々と続き、少しうんざりしてきた。
    「今後開発するロボットの云々……」と今回の実験とのつながりがわからない。人間ではないものに恋愛感情が持てるか、がロボット開発とどう関係するかが、ピンとこないのだ。

    さらに「政府の上のほうの」みたいな設定話もまったく必要なく(それがあることでストーリーの深みが出るわけでもなく、何かの伏線というほどのものでもない)、単に説明が長くなっただけで不要だったと思う。

    しかし、それらをわからせるために説明がさらに必要というのではなく、つまり、例えば、ロボットの開発なんてどうでもよく、「存在しない人間に恋愛感情が持てるかの実験」だった、としてもよかったのだはないだろうか。「人は何によって構成されているのかの実験」でもいいだろう。

    そのほうが単純なオトシ話ではない、深みが出たと思うのだが、どうだろう。


    <全般的に>
    オチも展開も原作のとおりであるのならば、原作の選定に問題があるのではないだろうか。短編だからわかりやすいものを、という理由で選んだのならば、観客を甘く見過ぎていると言わざるを得ない。
    もっと切り込んでほしかった。

    そして、演出に切れ味がない。短編で、こうしたオトシ話的なものであれば、もっとも切れ味のいいラストを演出すべきであろう。どれもぼんやりとした形で終わってしまう。

    正直言って、役者もこれからという人が多いが、熱意は感じられた。前のめりな感じが見てて心地良い。問題は、戯曲と演出。

    細かいことだが、当日パンフにそれぞれのタイトルがない、「第1話」「第2話」となっているだけ、タイトルは入れたほうがいいのでは。

    演劇の短編は観客としては取っつきやすいが、役者の力量、戯曲と演出の出来不出来があからさまに出てきてしまうので、よほどの出来でない限り、観客からの評価は厳しいものとなってしまう。したがって、本公演でしっかりと観客がついてきていると感じてから、の公演でもよかったのではないだろうか。本公演とのイメージでのつながり具合やギャップを楽しめるからだ。

    今後に期待したい。

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    2013/07/02 06:07

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  • 「観てきた」書き込むのが大変遅くなり、失礼いたしました。

    また、重箱の隅をつつくような感想を丁寧に読んでいただき、コメントまでありがとうございます。

    次回は大阪で、ということのようですね。
    しかも、お寺の本堂で、コメディ!
    これは観てみたい(笑)。
    でも遠い。

    大阪でのご検討をお祈りいたします。

    2013/07/09 07:46

    膨大なご教示、誠にありがとうございます。
    何度も繰り返し拝読致しました。

    ご指摘くださいましたいたるところに脱帽しきりで、
    まさに今のわたしたちにとって良薬でもございます。
    これほどまでの愛情に少しでも報いられるよう精進させて頂きます。

    2013/07/07 16:41

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