私と彼氏とその彼女 公演情報 演劇ユニット キャッチ.コム「私と彼氏とその彼女」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    誰もが通った道
     高校生男女それぞれの仲良しトリオを巡る学園物。学内隠れ家は秘密の場所、進学と恋、校則とグータラ欲求、教師とのやり取り、友情と恋、三角関係と裏切りの末の友情破綻等々。

    ネタバレBOX

     殊に、他人の彼を取ってしまったことで女同志の友情は非難のうちに壊れ、前カレ、前カノの関係は破れて三角関係はあっさり崩れたものの、奪った者もまた、雨の中を独り、ずぶ濡れになって家に帰り、生まれて初めて、何故、雨がシトシト降るという表現なのかを実感する辺り、思春期の柔らかい感性を描いてグー。翌日、彼女は学校を休む。彼から電話が入る。「大丈夫?」彼女は彼の傷心も思い遣って応える「大丈夫」。思えば、彼女が、隠れ家の壁に凭れて泣いていた時、偶然、通りかかった彼が「泣いてたの?」「ううん、泣いてないよ」「そうか、泣いてたように見えたから」彼はそう言うと一旦、隠れ家を離れかけた。戻ってくるとカルピスを持っていて泣いたことは知らんぷりをしてくれて「飲めよ」って置いていってくれた。彼女は2つのことがハッキリした。一つは、生ぬるいカルピスっておいしくないっていうこと、もう一つは、彼女は彼を愛してる、ということだった。
     別のシーンで、彼女は、かつて自分が住んでいた場所に来ている。彼も一緒だ。彼女は、総ての経験をここで初めてしてきた。初めて転んだこと、初めて泣いたこと、初めてブランコに乗ったこと等々、かつてその場所にあった遊具を一つ一つ指さしながら、小さい頃からの自分の様子、団地の前にあった公園のこと、何の約束もしなくても近所の子供達は、皆、この公園に集まってきて遊んだこと、夕ご飯が出来ると、お母さんが、子供の名を呼ぶ。「ご飯ができたわよ」の掛け声と共に。それで子供たちは、家に帰る。こんな経験を全部、ここで初めてしてきた、とファーストキス。
     この辺りの抒情性にこの舞台の真骨頂がある。感情の瑞々しい高校時代、誰もが通ってきた道を、その瑞々しさのまま描いた。

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    2013/06/29 22:08

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