劇作家女子会! 公演情報 劇作家女子会×時間堂presents「劇作家女子会!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    今、女子が感じているのは「不安」なのではないだろうか
    単に女性の劇作家が集まって上演をするというだけではなく、演劇関係の女子(!)のネットワークを広げていき、何か「いいことが」もたらすんじゃないかというような意図による企画の、第1回。

    ネタバレBOX

    なんていうか、「女子会」と言ってしまうところがいいのかもしれない。「女性の……」のように肩肘張っている感覚とは違う、軽さがある。

    軽さがあるが、芯はしっかりしている印象だ。

    「女子会」と言いながら、いきなり演出に男性の黒澤世莉さんを持ってきたのは……、まあ女子会だからそのへんのゆるさもアリなんだろう(笑)。
    個人的に言えば、黒澤世莉さんの演出は好きだから、観に行ったと言ってもいいのだが。

    黒澤演出は、演出家の色を全面に強く押し出すことはしない。
    戯曲の持ち味を引き出す良さがある。
    さらに、主に軸となる役者の良さも引き出す。

    今回の企画では、4人4色の戯曲を、その持ち味を変えることなく、見事に演出していた。そして軸になる役者をうまく見せていく。
    それぞれの演目をそれぞれが演出せずに、同じ演出家だったことで、統一感も出ていた。

    それにしても、特に縛りを設定せずに、4人が書いてきたものは、いい塩梅にバラエティに富んでおり、さらに変に時間の縛りがなかった(たぶん)ことで、それぞれが無駄な時間稼ぎや、言い足りないことがないようになっていたのは良いと思う。

    「恋愛」がテーマになっているようで、実のところ、根底にあったのは「不安」ではなかったのだろうか。
    表面は、恋愛についてのあれこれであっても、不安はぬぐい去ることはできない。

    つまり、今、女子たちが感じているのは「恋愛」ではなく「不安」ということではないか。
    どの演目にも「不安」が充ち満ちている。


    『彼女たち』第1部 作:黒川陽子
    キャラクターがあからさまにくっきりしていたので、わかりやすいと言えるが、ラストに第2部が控えているとは言え、幕切れがあまり鮮やかではない。
    佐々木なふみさんの美容師にしか見えない、あの感じがうまい。髪の毛の具合とかね。そして、男から見て「マズい女に手を出しちゃた」と思わせるような、ある意味幼くて、したたかな女を演じた長瀬みなみさんもよかった。

    『Compassion』 作:オノマリコ
    とても恐くて気持ちの悪い設定。
    台詞がいい。あり得ない台詞だけれども気が利いている。
    男の困惑は、観客の困惑でもある。
    しかし、ラスト近くで観客はそこからも引き離されてしまう。
    ただ、ラストに男と女が言葉には言えない何かで引かれ合っているということであれば、女が最初に男にアプローチして、徐々に「何か」が見えてくる(彼女にとっても、観客にとっても)とよかったように思う。
    また、男の奇妙さが段々明るみに出てくるのだが、そこがもう少し描けていたら、ラストの関係にうまくつながったのではないだろうか。
    阿波屋鮎美さんの台詞と立ち振る舞いの不気味さがうまい。あんな訳のわからないことを言っているのに(笑)、惹き付ける力がある。

    『バースディ』 作:モスクワカヌ
    ありそうな設定すぎ。
    幻影に振り回される妻、といったところか。
    誕生日は特別なもの、というのは女性の感覚かも。
    もっと静かな怖さのほうがよかったように思える。

    『親指姫』 作:鈴木鈴
    なるほど、シラノがベース。
    面白いのだが、途中からの進行が長すぎ、ラストは見えているのだから、もっとさっと行ってもわかったように思う。
    もし、途中のやり取りをこれぐらいにするのであれば、さらにもうひとアイデアほしいところだ。
    親指姫を演じた河南由良さんが、くつきりしていてとても良かった。

    『彼女たち』第2部 作:黒川陽子
    少し蛇足な印象。
    あえて2つに分けなくてもよかったように思える。
    ウソを重ねていくのだが、ラストがすぐに見えてしまうのが残念。


    今、気がついたのだが、ここの「公演詳細」の「その他の注意事項」に「※演劇公演です」とある。ホントの女子会と勘違いさせないためだろうか(笑)。

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    2013/06/27 05:55

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