クジラの歌 公演情報 株式会社Legs&Loins「クジラの歌」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    シージャックなのに温かい
     舞台は、東京―沖縄を就航するフェリー。航海日数は3日、途中、大阪と鹿児島に寄港する。だが、今回は勝手が違った。東京を出港すると直ぐ、このフェリーは、ピストルを持った数人の人間にシージャックされてしまったのだ。人質に取られたのは、客室乗務員2名、船長及び乗客6人と別室に監禁された女が1人。

    ネタバレBOX

     人質になった6人の素性がちょっと変わっている。1人は、元大企業経営者。他人が自分の周りに寄ってくるのは、総て金の為で自分の人間的な何かに惹かれてなどではない、と固く信じ込んでいる。次は、元ヤクザで抗争中に人を殺している。お次は、このヤクザの女。自傷癖があり、リストカットの傷跡がある不良少女。傷害罪でパクられた経験もある。どういう因縁か、その時、この少女を逮捕した刑事。現在は、仕事のストレスで精神のバランスを崩し静養中。お後は、ニートで引き籠り、ゲームおたくのブロガー。最後に沖縄で民宿を営む男、弐汰璃。最後の男以外は、誰も彼も、実は、自殺志願サイトに応募してきたメンバーであった。別室の女というのは、直接この流れには、関わってこない。シージャックグループの瀬美の彼女である真心だ。実は、沖縄で民宿を営む弐汰璃の妹である。彼らは、小さな頃、両親が離婚、兄は母と沖縄に残り、真心は父に連れられて東京へ出たのだった。だが、父は亡くなり真心は1人ぼっちになってしまう。おまけに進行性の難病に掛かり、感覚も徐々に麻痺してゆく。現在は、耳が余り聞こえない。末期には筋肉なども急速に衰え、老化症状が現れて死に至ると言われずっと入院生活をしていた。その病院の隣の棟に余命1年と宣告された瀬美が入院して来た。彼は、元バンドマンである。ところで、真心は、毎晩、隣の棟の屋上へ上がって来ては、調子っぱずれの歌を歌っていた。耳が聞こえていないので音程が狂ってしまうということを知った瀬美は、彼女にも分かるようにギターの共鳴板に触れさせ乍ら演奏、音程を調整してゆく。こうして2人の仲は急速に近くなり、終には恋人になった。
     真心は、「鯨に生まれたかった」という。「大きな体で自由に大海原を泳ぎたかった」と。2人は鯨の歌について話をする。鯨は、何故鳴くのかについて。瀬美の答えは「思いを伝える為」だった。
     ところで、瀬美の妹は、天才的なハッカーで自殺志願者のサイトを立ち上げた。その募集に応じた人間が、基本的には、今回の人質である。弐汰璃だけが、妹とその彼のことを案じて、このフェリーに乗り込んできたのであった。
     従って、航海の終わる3日目には、人質全員が射殺される。何故なら、自殺志願者達は、自分では死にきれないので他者や偶然によって死に至ることを望む者達だったからである。謂わば、シージャッカー達は、善意の殺人者だった訳である。偶発的殺人は、既に起こっていた。最初の日、人質達が集められた部屋に偶々やって来て誰何したガードマンは射殺された。その後は、海上保安庁の船に怪しまれることもなく、航海は最終段階に入っている。人質達は、共有スペースに集められ、心臓に手を当てることを命じられた。10回瀬美の心臓が鼓動したら、銃弾が発射される。カウントダウンが始まった。
     この後、ドンデン返しがあるが、それは観てのお楽しみだ。

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    2013/06/26 01:42

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