ソウルドリームズ 公演情報 ぱるエンタープライズ「ソウルドリームズ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    舞台が締まった
     ぱるエンタープライズの作品も森井 睦の演出とピープルシアターからの客演で、舞台が引き締まった。オープニングの効果音、役者達の形作るフォーメイションの美しさ、動きの躍動感と合理性で観客を劇空間に引きずり込む手腕は、何時もながらのものだ。

    ネタバレBOX

     7年間演じ続けた小劇団主宰者が、シナリオ・監督を受け持ち、劇団のメンバーからも多くの出演者を選んで、映画デビューを果たす群像劇。ただ、この発表で、劇団内には激震が走る。同じ仲間として苦楽を共にしてきた仲間が、選ばれる者、選ばれなかった者で線引きされ、親の反対を押し切り或いは苦しいバイト生活を続けながら、同じように頑張って来た仲間の明暗がはっきり分かれる瀬戸際でもあるからだ。主役を常に張って来た者への嫉妬、コネのある者への妬み、才能ある者、ない者、ボーダーにある者の迷い等々、其々の心に渦巻く感情は嵐にも似る。
     そんな中、劇団で常に主役を張って皆を引っ張って来たリョウを狙い澄ましたかのような「事故」が、立て続けに起こる。流石にこれは怪しいと劇団員自身のうち何人かが原因を調べ始め、事件のからくりを暴き、犯人を突き止める。
     役者の実人生と非常に近い設定なので、自分自身をさらけ出すような役作りになるわけだが、自分自身のことは自分が一番分かっていない、などという逆説と同じような役作りの難しさも出来する。舞台に限らず、総て表現する者の優劣は、己に嘘をつかず而も己の総てを人々の前に晒すことが出来るか否かに掛かっている。いみじくもボードレールが指摘しているように、「芸術とは売春の趣味」なのだ。主役の座を巡り、或いはヒロインの座を巡って熾烈な争いが展開される。
     “結果が総て”という現場で、プロフェッションに賭ける役者意識の凄まじさと覚悟、己を裸にする勇気と潔さが、爽やかさを覚えさせる。オープニングの所でも指摘したことだが、群舞の美しさ、フォーメイションの美しさと合理性も見逃せない。森井が今迄積み上げてきた財産ともいえる群衆劇のノウハウが、至る所で活かされている。演技では、殊にコトウ・ロレナが光る。発声も徹るタイプの声質で声量の大小で調節するタイプではないのが、彼女を引き立たせるのに役立ってもいる。フラメンコを踊るシーンでも、あの激しい踊りの本質を掴んで豊かな表現をしている。彼女の感性の広がりと柔軟性、緩急を見抜く力と、研究熱心が、芸に更に幅と奥行きを加え、これまでの舞台経験を内包して、前回観た時より更にステップアップしている。
     ところで、タイトルでサスペンスを謳っている割に、その要素が薄いのは、多くのサスペンス作品を見慣れた観客には、不満だろう。

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    2013/05/30 12:33

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