【次回公演は3月!ご来場ありがとうございました!】「かたわこや」 公演情報 劇団東京ミルクホール「【次回公演は3月!ご来場ありがとうございました!】「かたわこや」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    三寸を愉しむ
     初めに断っておく。片輪という差別用語が使われているのは承知している。然し、この作品を作った人々も自分も差別することもされることも嫌いである。差別はとてもデリケートな問題だ。言葉そのものに対する、自分の頭で考えた考察が必要なことは言うを待たない。然し、言葉の使い方、使われ方の方が、より重要だと自分は考えている。即ち、在る時代、在る地域で、在る表現が、如何なる意味をという単純なレベルではなく、言葉の背理も含めて意味する所をキチンと弁え、時には、踏み込んだ発言、意見交換すらできる程度には、自分と同等であることを尊敬の念と共に分かち合うことが、最低限必要なのである。このようなスタンスで、この作品を拝見した。

    ネタバレBOX

     見世物小屋と言えば、キッチュの代名詞とまでは言わないが、実際、そう思っている人は少なくあるまい。観客は、展示される片輪や不思議な生き物が本物でないこと位良く知っているのだ。そればかりか、知って居て騙されたふりをすることを楽しんでいるのである。興行を打つ側とて、その辺りの呼吸は、無論、充分に心得ている。日本には、タンカバイと言って、口先三寸で品物や芸の価値を認識させたり高めたりして売る伝統がある。縁日で見掛ける香具師も、見世物小屋の“親の因果が子に報い云々”などの口上もその類と看做すことができよう。香具師の商売で有名なものだけを挙げても、蝦蟇の油売り、バナナの叩き売り、金魚すくいの口上など誰でも直ぐに思いつくだろう。こんな伝統の上に立った見世物小屋の話である。
     時は大正、浅草の一等地に本拠地を置く見世物小屋、アポロ。この小屋の看板娘は、蛇使いのマキ。このマキに帝大生が恋をした。だが、彼女に焦がれた孝則は、父の経営する炭抗の炭塵爆発で死亡してしまう。孝則の友人で同じ帝大生の鶴夫も矢張りマキに一目惚れしてはいたのだが、マキは死んだはずの孝則に出会ったという。
     一方、この浅草の賑わいに付け込んで新興の暴力団組織の組長、鬼小島 が、アポロをも狙っていた。今迄、相身互いでやってきた地元の親分、源之助も組員を鬼小島に持っていかれ、ピンチである。そんな折も折、摂政の宮が「見世物を観たい」と言っているとの達しが、宮内筋から届けられた。内々の達しでは、アポロが氏名されていたが、実質的にも力を延ばしてきた鬼小島支配下の劇場、芸人も黙ってはいない。アポロ芸人のひっこ抜きも始まっている。そこで、コンテストが行われれることになり、どちらが、指名されるかは先の判断に任されることになった。
     大団円では、登場人物全員が、チェーンを鼻から通して口から出す芸をやってのける。摂政の宮役、御付きの者役を含め、敵対していたヤクザの組長らも総てである。この辺り、天皇家も被差別者であるとの判断が働いているかも知れぬ。実際、天皇の棺を担ぐのは、そのような民である。以上のような事実もあるので、大団円の連帯が、美しい。途中から、大団円にいきなりと怒らず、想像力で埋めて欲しい。

    0

    2013/05/21 11:04

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大