平田オリザ・演劇展vol.3 公演情報 青年団「平田オリザ・演劇展vol.3」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    「この生は受け入れがたし」
    東京と地方、夫と妻、それぞれの寄生と共生を考えさせるほろ苦い会話が可笑しい。
    寄生虫というマニアックな研究対象ではあるが、そこには仕事と家庭のバランスに悩む一般市民の普遍的な生活が見える。
    達者な青森弁が混じるのもまたリアル。

    ネタバレBOX

    例によって開演前から、舞台上のソファにはひとりの女性が座っている。
    所在なさげにお茶を飲んだり本を手にしたりしているこの女性に
    時折「お待たせしちゃってすいません、あと少しで終わりますから」
    みたいなことを言いながら職員らしき人が忙しそうに通り過ぎる。


    夫が、東京からここ東北の大学の研究室へと転勤したのに伴い
    妻は仕事を辞めてついてきたのだが、地方の生活になじめずにいる。
    夫の職場へ通って、同僚から寄生虫の講義を受けるという
    ちょっと不思議な状況である。


    まずこの職場のスタッフがみな、世間一般から少し外れるほど
    寄生虫に入れ込んでいることが可笑しい。
    (よく聞くことだが、自分の腹で寄生虫を飼ったりしている)
    たぶん仕事に愛着を持って臨む人はみな多かれ少なかれ
    こんな風に“変人”呼ばわりされるものだという気がする。
    仕事の専門性とはどこかマニアックなものだ。


    夫は嬉々としてこの職場で働いているが
    妻は近所の付き合いにも辟易して、団地にいたくないのもここへ通う理由の一つだ。
    冒頭の所在なさげな妻の様子が、落ち着かない
    居場所を失くした不安な状況を端的に表わしていることに気づく。


    夫(山内健司)が寄生虫の習性を説明しながら
    不器用に妻への愛情を見せるところがよかった。
    思わず、別居しないで妻が歩み寄れたらいいなと思ったりした。


    東京と地方の“寄生と共生”を考えさせるという点では
    なめらかな青森弁が功を奏していて、時に聞きとれないほど上手い。
    机の足元に“青森りんご”と書かれた段ボールが置かれているのもリアル。
    寄生虫愛好家の集団という特異な職場が意外と楽しそうで
    周囲の理解を得るのは大変だけど、研究職っていいなと思わせる。


    資料提供等で協力している目黒寄生虫館は隠れたデートコースとして人気らしいが
    受付で寄生虫グッズ(寄生虫クリアファイルとか)を売っていたのには笑ってしまった。

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    2013/04/22 03:24

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