魔笛 公演情報 新国立劇場「魔笛」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    オペラが、スペースオペラになっていた
    ミヒャエル・ハンペ演出、ヘニング・フォン・ギールケ美術&衣装、ラルフ・ヴァイケルト指揮、東京フィル、で、オール日本人キャスト。

    ラルフ・ヴァイケルトの『魔笛』はすでに新国立劇場でのレパートリーになっているのも頷ける。
    わかりやすいし、楽しいのだ。

    ネタバレBOX

    舞台の上は星々が輝く宇宙のような空間。
    そこに大蛇が現れ、タミーノ王子が襲われるのだが、その大蛇の造形が、なかなかグロテスク。口が左右上下4つに分かれて開くというもの。

    さらに、夜の女王は、空中から現れるし、要所要所で王子たちにサジェッションを与える3人の童子たちも、空を飛んで現れるし、彼らの衣装はすべて銀色に輝く。

    王子の笛で現れる怪物たちも、かなり不気味で、宇宙の怪物的と言っていいだろう。中でもライオンのような頭部を持った2本足の怪物は、「我が子を食らうサトゥルヌス」のサトゥルヌスのようである。

    もともと『魔笛』が、王子がお姫様を救出するというダンジョンRPG的な展開なのだから、これらの造形や設定などから、舞台が宇宙であり、いわゆるスペースオペラみたい見えて来るのだ。
    パパゲーノというコミカルな相棒も用意されている。
    スターウォーズですね(笑)。

    とは言え、物語の演出は、とてもわかりやすいし、場面展開が多いオペラなのだが、新国立劇場の舞台装置の活用により、無駄がなく、スピーディにさえ感じる。

    新国立劇場の舞台のセリは、小さいものや舞台全体が、あるいは後ろ半分など自在に動かすことができる。それを中間地点まで挙げることで地下をイメージさせたり、神官たちが上から眺めるという演出も可能となる。

    第一幕は、王子が王女を救うストーリー。しかし、終盤に実は王女を救ってほしいと王子に願った夜の女王こそが、悪者であったと指摘される。このあたりが善悪単純なスターウォーズとは違うところ(笑)。

    第二幕は、王子と相棒のパパゲーノに試練を受けさせる。それに打ち勝ったら、王子は王女と一緒になれ、神官たちと同様な高みに行け、パパゲーノにも伴侶が与えられるのだ。
    もちろん王子は試練に打ち勝ち、さらに夜の王女は滅び、大団円となる。
    王子と王女が手に手を取って、神官たちの中央に立ち、2人で手にしたトロフィー(後述)を捧げる姿は、神官たちが崇めるオシリスとイシスに重なる。

    ラストで、王子と王女に、ザラストロがトロフィーを与えるのだが、それは天空儀であった。太陽の回りを恒星が軌道を描いているもの。さらに、太陽を讃えることになるのだが、彼らの前には大きな「地球」が姿を現すのだ。

    もうここまで来ると、スペースオペラ、SFそのものではないか。まるで、彼らがかつて住んでいた青い惑星・地球を崇めている、地球人たちのなれの果ての物語のようになっている。

    しかし、違和感はまったくない。

    ラストで、王子と王女を中心として、神官たちが居並び、幕が下がるのだが、もともと神官たちを束ねていたザラストロだけが、幕の外に取り残される。そして、棺のようにポッカリと空いた空間に足を入れ腰を下ろすのだ。これの意味するところは世代交代なのだろうか。この演出は今まで見たことがなかったと思う。

    王子の相棒であるパパゲーノは、試練を乗り越えることはできないのだが、なぜか赦され、伴侶・パパゲーナとも出会える。高みに登らないが、ワインと伴侶がいれば幸せてせあり、それがわれわれ普通の人々の姿なのだということでもあろう。

    『魔笛』は、ユーモラスなところもあり、特にパパゲーノがその任を担う。
    今回の舞台では、日本語をしゃべったり(一言だけど)、王子の気を惹くために、指で王子にカンチョーをしてみたり(そう見えたけど違う?)と、掟破りな演出もあったが、当然場内は大爆笑だった。それはそれでいいと思った。

    パパゲーノ役の萩原潤さんが特に印象に残った。声もいい演技もいい。タミーノ王子の望月哲也さん、夜の女王の安井陽子さんも良かった。
    残念だったのは、急遽代役を務めた方の声が、聞いていて辛いな、と思うほど出てなかったり、メロディも微妙だったことだ。大きな役だったので、それが残念でならない。

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    2013/04/21 18:12

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