TheStoneAgeヘンドリックス「おおきないし」たくさんのご来場ありがとうございました! 公演情報 The Stone Age ヘンドリックス「TheStoneAgeヘンドリックス「おおきないし」たくさんのご来場ありがとうございました!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    流石評価の高い劇団だ
    TheStoneAgeのツープラトン公演のうち、ヘンドリックスの作品だ。流石に評価の高い劇団である。シナリオ、演技、演出、抑えが効き、勘所をついた照明と音響、適確な間の取り方で効果的な舞台を作りながら、大阪らしいギャグのセンスで笑わせる、更に自然でたゆたうような筋運びで、実に深いことをさらりと表現する。登場人物の名前にも、細かな配慮が見られるのは、無論偶然では無い。
     天狗役の緒方 晋(The Stone Age)、渚役の大西 千保、滴役の一瀬 尚代(baghdad café)、神田役の本木 香吏(仏壇観音開き)らの演技が特に気に入った。

    ネタバレBOX

     近畿地方の海岸近くにある大きな石、この石には、天狗が座って海を眺めているのを目撃したという言い伝えがあり、UMA(雪男、ネッシー、ツチノコのような未確認生物)ライターの渚と編集者の神田 温子が取材にやってきた。この石から直ぐの所に彼女達の予約した民宿、春日屋がある。この宿の主、清隆は、町議会議員の大塚こだまと街おこしの為に天狗伝説を利用しようと、あの手この手の作を練り実践している。因みに、大塚は、天狗の面を被って急に現れたりするので、時には、他人を驚かす。実際、清隆と共に宿を切り盛りしている滴は、腰を抜かさぬばかりに驚いた。こんな細工を弄したりしているので、無論、彼らは天狗が本当に居るなどと信じてはいない。編集者の神田も然りである。
     然し、渚は、子供の頃、体が弱く、本ばかり読んでいて、他の子供達と同じように遊び回ることが出来ずにいた。その彼女が嵌ったのが、小学校4年の時に読んだUMA特集雑誌であった。以来、彼女のバイブルは、この時読んだ雑誌であり、今、彼女が、UMAライターになっているのは、その結果である。そんな彼女は、子供のように純真な心を持ち続けている。その彼女の前に、天狗が現れた。だが、天狗の顔色は赤くないばかりか、羽も無い。然し、彼女以外に天狗を見ることのできる人間はいないのであった。彼女は、天狗に多くの質問をし、記事を書く為にメモを取るが、神田は、写真が必要だと言う。そこで、天狗を写そうとするが、どうしても写らない。仕方なく、民宿へ温泉風呂を浴びに来る画家の生田 澪に天狗の特徴を伝えて絵を描いて貰う。そうこうしているうち、天狗に詳しいと定評のある漁師にも取材をという話があり、取材を申し込むが、この漁師、松尾は漁の為に、天狗の羽を持っており、この羽の霊力のお陰で漁も豊漁が期待できるばかりではなく、天狗の気配を察知することもできるのであった。その松尾が、渚と天狗が話していると、時折やって来て、天狗狩りをし出すのだが、投網を正確に天狗の居る方へ打つので、観客には、とてもおかしく、罪の無い笑いを齎す。
     ところで、この海岸は、2年前に北の方で起こった大地震の余波で津波が押し寄せ、大きな被害を出しており、滴の弟はまだ行方不明のままである。天狗石の位置も何度となく位置が変わっている。といった情報や天狗の「人間には見えない白い雪が降る」という科白を入れることで観客の想像力をやんわりと3.11.3.12へ誘うのだ。
     渚は、滴にも遠慮勝ちに取材を申し込む。明るく振る舞っている滴にも、辛い記憶があるかもしれないからだ。案の定、彼女は風邪をひいた弟を「治る迄」と引き留めた為殺してしまった、と罪の意識に苛まれていた。それで、津波の来る前に、この辺り一帯に生えていたシロツメクサの種を撒いていたのだ。弟が、四葉のクローバーを見付ける名人であった思い出を織り込みながら。その彼女のどうしようもない悲しみに渚は寄り添おうとするが、矢張り被災者と取材する者との間に在る越えようの無い傷の深淵を、越えられない。然し、この作品の凄さは、越えられないことを見据えたまま、個々の力を前に向けて歩み出そうとする姿勢を示す所にある。渚は、黙って独り天狗岩を押す。一所懸命、唯、明日に向かって押す。横には、滴がいる。滴は渚を見ている。渚は岩を押し続ける。たった独り、終に、滴が手を貸す、幕。
     余談だが、滴は、荒れ狂う海に弟を奪われる一滴の水、渚は、その海と陸との境界、どちらも水の精、龍と深い関係を持つが、渚が滴の集合であると同時に、滴が集まらなければ渚は存在し得ない。更に踏み込めば、天狗信仰は役 小角と深い関係にある、と同時に小角は、別格の天狗という側面を持ち、他の天狗同様、水の精、龍を抑える神通力を持つ。物語の中に登場する天狗は、天狗岩に登って、海を眺めるのが、好きである。太陽の方へ飛んで行った仲間を偲んでいるのである。そうしながら、渚との話でとても大切な哲学を教え、渚が、ひいては滴が、明日へ踏み出す力を、自らを自らの力で制御する力を与えたのである。
     渚の苗字は伊勢、滴の苗字は春日である。どちらも神道と関わりのある苗字だ。天狗と神道の関わりは今更言う迄もあるまい。

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    2013/04/17 04:32

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  • アサダ タイキさま
     舞台は、基本的に、演じる側と観る側の想像力による戦いだと思っています。お互い精進しましょう。それにしても大阪には、いい劇団が、たくさんありそうですね。自分の知っている劇団だけでも、今回、初めて拝見したアサダさんの所、手のひらサイズ、Mayなど東京で公演してくれた劇団の名がすぐ上がります。今後ともよろしくお願いします。
                            長谷川 明 拝

    2013/04/18 01:59

    作演出の朝田と申します。
    今回はご来場誠にありがとうございました!
    ここまで作品意図を汲んでもらえると作家冥利につきます。感激です!
    また東京へ芝居を持っていけるよう精進致しますので、
    これからもThe Stone Ageを宜しくお願い致します!

    2013/04/17 12:32

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