満足度★★★★
力が入っていました
旗揚げとあって、考え抜かれた台本と、意欲満々の役者陣とで、「おっ、ちょっとちがうな」
と思わせる舞台になったと思いました。
まず劇中劇についてですが、私にはそれなりに楽しませてもらいました。手法としては、奇抜では
ないと思いますが、私の隣の二人連れの女性が、ひそひそと「あっ、なにがなんだかわからなっちゃった」
とこぼしていました。もちろん受け手の責任もあるのでしょうが、送り手側として、もっとすっきりとさせる
ことも視野に入れてほしいと感じました。かといって、どこをどうしろという妙案が、今あるわけではありません。
七人(だと思いましたが)の登場人物の数も多すぎるとは思えませんし、それぞれが個性的ですので、混乱する
こともありません。ないものねだりかも知れません。これは私の宿題として考えます。
ストーリーの展開もごく自然に受け入れられました。(あとで苦言もあるのですが)
役者さんも、前述したように、それぞれの方が個性的に演じていたと思います。「飛び抜けて」といった役者さん
ではないのですが、みな好感のもてる「持ち味」を発揮していたと思います。
旗揚げですので、「力み」もあることでしょうが、今後の発展が楽しみです。
気になったことを二つ。
一つ目は、「殺意」について。人は、そんなに簡単に人を殺めることができるのだろうか。そんなことを考えながら
観ていました。あまり踏み込むと、ネタバレになりそうなのですが、最初の「事変」については、まああるだろうと。
しかし、それ以外については、私にはやや飛躍がありすぎるのでは。そんな印象です。
二つ目。こちらのほうが強いものです。
このミステリーは、最後にどーんと人生の重み、人それぞれのせつなさを、(たぶん)感じさせようとしたものだと
思います。しかし、私には、そのどーんとした「重さ」を感じきれないまま、幕となってしまった感があります。
それはなぜなのだろう。「若さ」をむき出しにした役者揃いでもなかったし・・・
ひとつに、それは前半部にあるのかと思われます。これは、登場人物の、それぞれの「背景」「性格・生活」「状況」を
客に「刷り込む」貴重な部分でもあります。それがあって、初めて終末の「重さ」が感じられる。
そんな貴重な前半で、コスプレが大きなウェイトを占めていたことで、まず劇を軽くしてしまったように思いました。
それから、男優さんたちに、もっと「自分」を語らせるべきだったとも思いました。最初は、だれがどういった役か、
混同していたくらい、同じように見えました。(もちろん皆無ではないのですが)
今日は、劇評自体、自分でも気にくわない。
なかなかいい劇だと思えるのに、それが私の心にずしんと残っていないからです。
それは、苦言の二つ目の感覚からなのかもしれませんし、「もっとリアルなものを期待していた」せいであったからかもしれません。
「よかった。しかしまだまだ」
そんな感想が、次への発展の原動力となるのですね。
次回、北池袋、そして池袋を期待。