緊迫感、伝わる舞台。若手中心に。
杉並区の阿佐ヶ谷にある小劇場・阿佐ヶ谷アルシェにて2013年3月16日、夏色プリズム旗上げ公演『シロツメの咲く後に』が上演された。
作・演出は、硬派な作品を得意とする原田直樹氏。キャストには多くの20代が集結し、若手中心の舞台となった。
設定は、劇場を使った舞台のリハーサル。そこで、突如、入れ替わったナイフにより演出家が刺され、役者同士の疑心暗鬼が広がっていく。
どこまでが演技か、どこまでが現実なのか、観客という自身の存在すら分からなくしてしまう仕掛けを用いている。
劇場に詳しい情報通は、語る。
「たしかに、ここの劇場(阿佐ヶ谷アルシェ)でしか、緊迫感は伝わらないでしょう。劇場のドアが開かなくなったり、携帯の電波が入らなくなってしまう。たとえば、それを青山劇場で表現できるか(笑)。商店街から少し外れた場所にある、この劇場だからこそ、できるんですよ。しかも、地下の危うい雰囲気ね。下北沢の劇場と違って、電車のガタゴト音も聞こえない」
今回、阿佐ヶ谷アルシェで上演された舞台では、客席のキャパシティ(収容人数)は約100人ほど。形状としては、学芸大学の千本桜ホールが近い。
狭いスペースへ大勢の観客を詰め込めるが、段が低く、奥行きがあるため、舞台の下方は見えづらいという指摘もある。
前出の情報通は、こうも 語る。
「観客も、地下に閉じ込められるんじゃないか、という不安感があった。途中、演出の田中が音響の席からかな、大声でタメ出しをして、舞台が中断したシーンがあったでしょう。その声で、もう舞台か現実かグレーゾーンになっちゃった。あれは、もう、演出の人間だよね。映画業界にもよく、あんな人いるよ。演劇では見かけないタイプだけど」
舞台『シロツメの咲く後に』は、17日まで上演中だ。