ボクの四谷怪談 公演情報 シス・カンパニー「ボクの四谷怪談」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★

    う〜ん…
    橋本治が昔書いたという脚本を、若手の勢いある俳優が演じ、蜷川幸雄が演出する、ロックミュージカル! というだけで、期待は高まった。

    だけど、カッコ内だけど、「ロックミュージカル」とうたっているのだが、音楽がイマイチ。
    もの凄くイマイチ。
    ロックと言えばロックなのかもしれないけど…。

    演出が望んだロックではなかったのではないだろうか。

    ネタバレBOX

    いや、もちろん一口に言ってロックにはさまざまあるのは承知しているし、劇中の曲はロックであるか、ないかということはそんなに重要ではなく、とにかく、あんまり楽しくはなかったな、というのが感想だ。

    また、ミュージカルってうたっているのも違うように感じてしまった。劇中で歌えばミュージカルっていうわけではないだろう、と思うのだ。
    劇中の音楽が耳に残り、帰り道で口ずさみたくなるような、あるいはCDを探すような、そんな楽曲がないとミュージカルは寂しい。

    橋本治が翻案した物語もそんなには面白くない。

    四谷怪談を今風の時代背景と融合させ、侍が背広姿で、ってな風になっているだけで、特に面白いものではない。中途半端に古さが感じられる。
    会話がポンポンとリズム良く交わされるのであれば、また違ったものになったであろうが、これはミュージカルなのだ。
    やはり歌のパートになるとスピードやリズムが落ちる。

    そうなのだ、今、役者が即興で歌っているんじゃないか、と思うぐらいのパッとしない音楽だった。
    蜷川演出としては、ロックなんだから、シャウトして、という感じにしたかったのだろうが、肝心のメロディがこれではシャウトはできない。
    できないのに、ロックっぽく役者たちは熱唱風に歌おうとしている(つまり、演出としてそう歌わせようとしている)。それがまったく曲調とマッチしていない。ギャップがあるのだ。
    つまり、演出が望んでいた曲調ではなかったのではないだろうか。

    明らかに、作曲の人選ミスだろう。そういうシャウト風の曲を望んでいて、「ロック」と付けたのならば、そういう作曲ができる人を選ぶべきだった。
    もしくは、出来上がった曲でなんとかするという方法もあったのではないだろうか。

    ただし、物語全体が、若者のもやもやした焦燥感のようなものを感じさせるのであるから、やっぱり若さを発憤させるようなシャウト系のロックであったほうが良かったのだ。

    もちろん、すべての曲悪いわけではなく、ギターを弾いて歌う歌は、もの凄くいい曲だと思う。
    だけど、ほかの曲はまるで役者がいま即興で歌っているようにしか聞こえず、楽しめないのだ。

    それは、小出恵介さんの歌が下手すぎということもある。上手い下手という前に、声が出てないし、聞いているこちらが恥ずかしくなるほど。

    主人公については、初めからきちんとキャラ立てておけよ、と思うぐらいで、中途半端で魅力を感じない。脇の手堅い固め方は、アイドルや若手人気俳優を使うときの、蜷川風なのだが、それによって舞台経験の力量の差がありありとしてしまった。
    小出恵介さんは、そんなに演技は下手ではないはずなのだが、歌がダメだってことは当然自分も気づいていることから、芝居も萎縮してしまったのではないだろうか。

    演出としては、ラストだけはがんばったように見えてしまう。
    第一部から、とにかく人がわさわさしていて見づらいし、歌のシーンをすかっとしないと、なんだかなー、と思っているところに、ようやくスカッとするシーンがラストに来て、観客はホッとする。

    ここのロックにはきちんと熱量があるし、ダンスもいい。
    これができるのならば、なぜ最初からやらないのだ! と逆に怒ってしまう。

    ただし、多くの観客は、この舞台に望んでいたシーンなので、気持ちが解放され、ノリノリになっている。ラストの、この感じだけで、「この舞台よかった〜」となる人多いのではないだろうか。……チケ代高いしから、そう思わないとツライしね。

    ラストにこういう演出を持って来たことに、蜷川さんの老獪さ(笑)を垣間見た気がする。

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    2012/12/24 20:56

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