地響き立てて嘘をつく 公演情報 ガレキの太鼓「地響き立てて嘘をつく」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    互いを照らし出すふたつの流れ
    二つの時間の刻みが舞台にあって、
    それぞれの感触がしたたかに描かれ、
    一方で他の時間を映えさせる力にもなっていて。

    ベースのアイデアはむしろシンプルなもので、
    だからこそ、その絡み方やそれぞれの世界に描き出されるものの
    鮮やかさが際立っていて。

    また、アイデアに寄りかかるだけではなく、
    一つずつのシーンに、ベースの発想に負けない表現が
    作りこまれているのも良い。

    さらに言えば、
    骨格をしっかりと持ちつつ、
    様々な表現や発想を取り込む間口の広さを持った戯曲でもあり、
    作り手の創意を描き込む新しいパレットが、
    またひとつ生まれたような感じがしました。

    ネタバレBOX

    作品の企てを理解するまでに少し時間を要したのは事実。
    でも、冒頭から、シーンに観る側を飽きさせない力があって。

    命を授かり自意識が生まれる前までが原始時代。
    幼年期から思春期、さらには青年期に至るまでの齢のひと刻みが、
    歴史の1世紀と置き換えられて、歴史と成長の姿が、
    ニュアンスを重ねられ、束ねられて
    舞台を満たしていきます。

    その仕掛けに気付いた時点から、
    舞台で描かれるものに込められた
    意味の重複が
    わくわくするほどに面白く、
    それが一つの年齢や時代にへ垂れることなく、
    時代ごとにルーズに重なり膨らんでいく凄さに感嘆し
    ぐいぐい惹かれていく。

    小学生のころというか平安時代くらいまでは、
    発想の面白さを喜んでいただけだったのが、
    鎌倉・室町と進んでいくあたりから、
    時代のとがり方と思春期の想いや内心のリンクが、
    更に研がれて、
    単に描き方のアイデアを見せるのではなく、
    その半歩内側にある、
    時代の進歩や内面の成長を
    互いのニュアンスのなかに映し出す
    広がりが生まれて。
    舞台が進むごとに
    舞台の世界も、観る側の視野もぐいぐい広がっていく。

    なんというか、表層だけではなく、
    その半歩内側のニュアンスも合わせ鏡となって、
    だからこそ浮かび上がってくるものが
    あるのですよ。
    また、その仕掛けが最後まで
    へたれたり、尻つぼみになったりせず、
    むしろ、重なりのなかにさらに導かれた表現の
    高揚感のようなものまでが供されて。

    役者たちにも、場を立ち上げる瞬発力と
    背負った場を二つの視座どちらにも晒して色を醸し出す
    演技の幅があって。
    役者がモザイクのように組み上げるこの国と人の歩みが
    作り手の表現の手腕や遊び心とともに
    不思議にリアルな質感へと変わっていく。
    舞台が今に追いつくころには
    二つの歩みのどちらの足跡の肌触りも
    どこかユーモラスで、鮮やかで、
    でも、観る側には二つの俯瞰がくっきりと残って。
    さらには、その先のラストシーンにも
    その先の未知の質感が織り込まれていて。

    終演時には
    作り手や演じ手の表現の切り開き方に深く心を奪われておりました。
    なにか、ちょっと体験したことのない面白さでありつつ、
    単なる発想の秀逸にとどまらないものもありつつ・・。
    加えて、これが唯一の完成形ということには収まりきれない、
    こののフォーマットのさらなる可能性も感じて。

    帰り道、作品を思い返して、
    なにか、もう一度わくわくしてしまいました。

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    2012/11/17 11:13

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