満足度★★★★
子供達のドキュメンタリー演劇
ルーマニアのトランシルバニア地方に住む12人の10代の少年少女をフィーチャーしたドキュメンタリー的な作品で、乾いたユーモアと力強さが印象に残りました。
ある村に演劇を教える女性教師がやって来る物語を主軸にして、ハンガリー人(マジャール人)とロマ人、教師と生徒、親と子、田舎と都会といった対立が描かれ、政治、経済、宗教、教育、セクシャルマイノリティーといったテーマについて考えさせられる内容でした。
インタビュー映像だけが流れる時間が多く、さらに劇中劇が折り重なったような特異な構成で、事実と虚構の境目が曖昧になって来るのが印象に残りました。
「ストップ」の掛け声をきっかけにして、直前のシーンについて子供達が意見を述べる時間となり、時には客席も明るくなって観客も一緒に考えて意見を言うように要求することもあり、観客を傍観者の立場に留めておかない趣向が刺激的でした。意見を言う人がほとんどいなかったのもいかにも日本人的で興味深かったです。
基本的には台詞の日本語訳がスクリーンに映し出されていて、討論のパートは即興で展開する為、同時通訳の人が訳していたのですが、即興で演じていることが明確になってしまい、台本通りなのか即興なのか分からないスリルが失われていて、外国語で上演する難しさを感じました。