こい!ここぞというとき!(2012年サンモールスタジオ最優秀演出賞、受賞) 公演情報 ポップンマッシュルームチキン野郎「こい!ここぞというとき!(2012年サンモールスタジオ最優秀演出賞、受賞)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ”ここぞというとき”逃げない話
    「いい大人がよくもまあ…」という馬鹿馬鹿しさがポップンの魅力。
    笑っているうちに怒涛のナンセンスに巻き込まれて
    気がつけばいつしか私も一緒に車に乗っていた・・・。

    ネタバレBOX

    逆田真(加藤慎吾)は父親を探している。
    小さい時に家を出ていったきりの父親は、興信所に頼んで調べてもらうと
    新宿で店をやっていると言う。
    その店「無いチンゲール」はぼったくりバーで、父はそこのママになっていた。
    名前を隠して客として入った真は、父親の婚約者アスオ(仁田原早苗)を探しに
    店の従業員やアスオの大家(小岩崎恵)と共に車に乗り込む羽目になる。
    そして様々な人と出会いながら、札幌を目指すのだった。

    舞台を上下に割っての構成が面白い。
    下では張りぼてカーが2台(?)疾走し、
    上では車を降りたところでの出来事が描かれる。

    無いチンゲールのママで真の父親(吹原幸太)が上手い。
    父親として家族を持っていた時期を「無かった事にしたい」と言いつつ
    さっき別れた男が息子だったと判ると(やっぱり…)と一瞬取り乱す。

    ストーリーを牽引するもうひとつの力が
    バーの従業員カツ子(サイショモンドダスト★)のパワーだ。
    サイショモンドダスト★さんって手術してたっけ?
    客席後ろの方から観ていたので思わず目を凝らすほど本物みたいな胸してた。
    スキの無いなり切りぶりといい、客の財布を盗るタイミングといい素晴らしい。

    CR岡本物語さん、相変わらず極小衣装で身体を張っての芝居が可笑しい。
    この人の“声はイケメン、実はヘンタイ”な役どころは
    いつもポップンのポップンたるテイストを支える役目を果たしている。

    ポップンの作品にはいつもマイノリティへの共感があって
    今回もゲイやSM愛好者、幽霊や未来からの訪問者、
    果てはジャガイモ・玉ねぎに至るまでみんな一緒に車に乗って行く。
    これは、それぞれが抱える葛藤や旅の理由を乗せたロードムービーだ。
    幽霊の心情などほろりとさせて、まさにタイトルの”ここぞというとき”を思わせる。

    ちなみに私がポップンを好きな理由のひとつに”間のセンス”がある。
    カレー云々のあたりでは、その”間”に爆笑してしまった。
    次のシーンで何気にジャガイモと玉ねぎがいなくなっているのも可笑しい。

    ラスト、名乗らないまま一人車を降りてから
    今別れた父親の携帯に電話をかける真。
    走る車の中でその電話を受ける父親。
    一瞬だけ二人が浮かび上がってすぐに暗転して終わる。
    この終わり方がすごく効いている。
    なんて洒落たエンディングなんだろう。

    この思いがけず丁寧な人の気持ちの掬い方があるから
    ったくいい年してよくやるよ、と笑いながらまた次も観たくなるんだよなあ。

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    2012/10/19 21:03

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